「捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ」井出留美著

公開日: 更新日:

「ブーランジェリー・ドリアン」は“持続可能なパン屋”としてたびたびメディアで取り上げられている。国産の有機栽培小麦を使用し、ガスを使わず薪の石窯で焼き上げる。そして何より“パンを捨てない”ことで注目されているのだ。

 SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」では、2030年までに食料の廃棄を半減させることが設定されている。しかし、日本では1年間におよそ600トンの食品ロスが発生しており、それはかつての同店でも例外ではなかった。本書では、オーナーでありパン職人である田村陽至氏が、いかにして“捨てないパン屋”になったのか、その半生がつづられている。

 パン屋の3代目として生まれたが、環境問題に関わる仕事を模索していた田村氏。パン作りにはまったく興味を示さない息子に父はこう言う。「食べものがいちばんの環境問題なのに」。しかし当時はその言葉を理解することができなかったという。

 やがて家業を継いだものの、閉店後は毎日大きなごみ袋2つ分のパンを捨てるという現実に愕然とする。「焼きたてがいい」「いろいろな種類から選びたい」という消費者のニーズに応えるため、たくさんの種類をどんどん作って店頭に並べるのがパン屋の常識だったのだ。

 かつての父の言葉を噛みしめた田村氏は、店の経営スタイルを大胆に変更。チーズなどさまざまな材料を使用する売れ筋の菓子パン製造をすべてやめ、材料が少なく賞味期限も長いカンパーニュなどのシンプルなパンのみの販売に踏み切った。しかし客離れや従業員の離職という事態に直面し……。

 子供にも読みやすい優しい物語調で、環境問題や食品ロス、そしてこれらに取り組む意義を教えてくれる。

(あかね書房 1430円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  2. 2

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 3

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  4. 4

    長澤まさみの身長は本当に公称の「169センチ」か? 映画「海街diary」の写真で検証

  5. 5

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  1. 6

    樹木希林に不倫を暴露された久世光彦

  2. 7

    ドジャース佐々木朗希またも“自己中発言”で捕手批判? 露呈した「人間性の問題」は制球難より深刻

  3. 8

    自転車の「ハンドサイン」が片手運転ではとSNSで物議…4月1日適用「青切符」では反則金5000円

  4. 9

    【独自】急死の中山美穂さん“育ての親”が今朝明かしたデビュー秘話…「両親に立派な家を建ててあげたい!」

  5. 10

    柳楽優弥「九条の大罪」23歳新人が大バズり! 配信ドラマに才能流出→地上波テレビの“終わりの始まり”