「気候変動の真実」スティーブン E・クーニン著 三木俊哉訳

公開日: 更新日:

 地球環境は危機にひんしており、「脱炭素」が急務。多くの人がそう信じて疑わない昨今だが、本書は“気候危機説”には科学的根拠があるのかと疑問を投げかけている。著者はオバマ大統領下でエネルギー省の科学担当次官を務めた、アメリカを代表する科学者のひとりだ。

 純然たるデータや科学文献の記述が、政府やマスコミを経由してねじ曲げられていると本書は警告する。例えば、アメリカ外交問題評議会が発行するフォーリン・アフェアーズ誌に、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長の「気候変動はすでに私たちの命を奪っている」という論考が掲載された。しかしその中身はタイトルに沿うものではなかった。

 貧困国では、廃棄物や排泄物で調理することによる「室内大気汚染」が起こり、その影響が全死亡者の8分の1に相当するという事態に陥っている。汚染による死亡は、貧困がもたらす結果だ。にもかかわらず、論考では気候問題といっしょくたにしてしまっていた。WHOトップによるこのようなデタラメは気候変動の真実をねじ曲げ、公衆衛生上の使命に対する信用も揺るがすと著者。

 ニューヨーク・タイムズ紙では「気候変動が脅かす世界の食糧供給」という記事が掲載された。これは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書をもとに報じられたが、報告書にはこの50年で麦や米などの収穫高は2倍以上になっている一方、食品の4分の1が廃棄されていることも記されている。報告書を注意深く読むと分かるのは、気候が原因の不作は“来ない終末”ということだという。

 科学が“言っていないこと”により下される決定を、誰がしているのか。注意深く見る目が大切であることを教えられる。

(日経BP 2420円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  2. 2

    菊池風磨はジャニー喜多川氏の“推薦”もあって慶大総合政策学部に進学 仕事の合間に1日10時間の猛勉強

  3. 3

    2026年夏の甲子園は「不作」を通り越して“凶作”…プロスカウトが指摘する異変の原因

  4. 4

    豊昇龍が長期離脱で大の里までピンチ! “ひとり横綱”の重圧で「共倒れ」にならないか

  5. 5

    有望高校球児の進路事情に異変! 青学大は「ドラフト指名と同等の価値」「明大より上」とプロスカウト

  1. 6

    SNSで大バズリ! 高市首相の「激ヤバ発言動画」発掘がブームに…中には悪質な切り取りも

  2. 7

    スマスロ『L戦国乙女5』は前評判での「覇権台」が裏目に…ユーザーの厳しい意見に今後のホールの対応は?

  3. 8

    ヤンキースの「横浜・織田翔希獲得プラン」をスッパ抜く! キーマンに挙がる“日本人実業家”の名前

  4. 9

    夏の甲子園投手 プロ注目の4人をスカウト「ガチ評価」最注目の横浜・織田翔希には“意見”割れる

  5. 10

    佐藤輝明「三冠王」なら年俸いくら? メジャー流出阻止へ阪神が用意する破格の条件