活躍に大注目!芸人本特集

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「笑い神M-1、その純情と狂気」中村計著

 いまやテレビに欠かせない芸人は、良くも悪くも多くの人の注目を浴びる存在だ。今回は、そんな芸人をテーマに据えた5冊を紹介。お笑いブームの起爆剤のMー1グランプリから、芸人のバイト生活、芸人が追求した美容道まで、その生態を探ってみよう。



 漫才日本一を決める一大イベント「M-1グランプリ」は、優勝すればその日から富と人気を集めることができるお笑い界のシンデレラストーリーの舞台だ。全国からお笑いに取りつかれた者たちが集まり、その多くが散っていく。

 本書は、そんなM-1グランプリが誕生するまでの物語から、M-1を契機にのし上がっていった芸人の生きざまを追ったお笑いドキュメンタリー。

 島田紳助の「漫才コンテストで一番面白いコンビに1000万円の賞金を与える」というアイデアから始まったM-1は、2001年にスタート。なかでも「笑い飯」は、9年連続で決勝に進出するという偉業を成し遂げ、ついに2010年に優勝した。

 本書は、「笑い飯」のふたりを追いつつ、同時代の漫才師も取り上げ、笑いを追求する者たちの真剣な狂気に迫る。

(文藝春秋 1980円)

「自分を大切にする練習」りんたろー。著

 EXITとして活躍する「りんたろー。」が自らのコンプレックスを告白しつつ、男の美容道を説く異色の美容本。

 紫外線アレルギーがあった著者は、幼少期から湿疹ができやすく友達から「ブツブツ」と呼ばれて傷ついていた。芸人になってからは容姿をいじられるようになり、それがネタになることにおいしさを感じる一方、容姿いじりで傷つく人がいて、実は自分自身も傷ついているのではと考え始める。

 そこで、自分を粗末に扱うのをやめて美容を追求して見た目を磨く方向に舵を切り、スキンケア、ボディーメーク、食事、メーク、メンタルケアなどなど、自分を大切にする練習にトライする。

 自分の心と体をメンテナンスすることは長く芸人を続けていくことにつながると説く著者の姿は、新時代の芸人の姿を予見させる。

(講談社 1650円)

「こんなにバイトして芸人つづけなあかんか」ピストジャム著

 吉本所属の芸歴21年目のピン芸人が、芸人を続けるためにやったバイトを振り返るバイト遍歴のエピソード満載。

 大学卒業後、吉本が運営する養成所・NSCに通い始めた著者は、成功したらバイトをやめると思いつつ20年が経過。結果、経験したバイトの数は50を超えたが、いつお呼びがかかっても行けるよう、いつでも休めるバイトを厳選していた。

 ピザのデリバリーでは、裏道を知り尽くした同じ地域で同業他社のピザデリバリーを掛け持ちするという禁じ手を編み出し、「もっとこっちのシフトに入ってほしい」と言われ、二股男のような状況に陥っていく。

 ほかにも公園の鍵を開けたり閉めたりするバイト、出会い系のサクラ、ハガキの汚れを消しゴムで消す仕事なども経験。

 すべてネタの宝庫と化していて面白い。

(新潮社 1430円)

「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」中西正男著

 芸能記者歴20年を超える著者が、芸人の愛すべき生態を語る芸人愛の書。師と仰ぐ芸能リポーター・井上公造氏のスタイルに倣って、芸能人の懐に飛び込んで共存を図る取材スタイルから見えてきた、売れる芸人の魅力をつづっている。

 取り上げているのは、西川きよし、上沼恵美子、ダウンタウンなどなどの芸人25組。

 たとえば、「千鳥」の章では、居酒屋で遭遇した大悟が著者のポロシャツの背中をなでて「触ったことのねぇ生地じゃ」と言ってトイレに行き、席に戻ってきた時にも「触ったことのねぇ生地じゃ」と幸せそうに再び触っていった話を紹介。千鳥は、大悟とノブの一方が引っ張るのではなく、共にエンジンがついている絶対に売れるコンビだと評している。

 読んでいると芸人の肉声や顔が浮かんでくる。

(マキノ出版 1650円)

「東京芸人水脈史」山田ナビスコ著

 お笑いといえば大阪というイメージが鉄板だが、東京にも脈々と流れる笑いの水脈がある。本書はテレビではなく、お笑いライブという場で駆け出しの芸人たちを約30年見てきたお笑いライブ作家の著者による東京のお笑い史。

 年間数百本の東京吉本ライブに関わった著者には、芸人との泥くさい苦闘が日常だった。

 吉本興業が運営していた「銀7」こと銀座7丁目劇場の座付き作家となった著者は、ダイノジ、ペナルティら銀7メンバーと共に笑いを追求する戦いに放り込まれ、大阪芸人と東京芸人の圧倒的格差の前に徹底抗戦に追い込まれたニガイ体験を率直に語る。

 お笑い収容所と呼ばれたNSC東京での講師体験やリアクション芸の考察、テレビでの失敗談、“いじり愛”から銀7で初めて売れたロンブーの凄さまで、お笑いの虎の穴に入った人ならではのエピソードが満載だ。

(宝島社 1760円)

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