「アフターChatGPT 生成AIが変えた世界の生き残り方」山本康正著/PHPビジネス新書

公開日: 更新日:

「アフターChatGPT 生成AIが変えた世界の生き残り方」山本康正著

 昨今話題のChatGPTを含めた「生成AI」。文字や資料やイラストなどをAIがネット上の情報から自動生成してくれるツールだが、本書はそれらに関する入門書である。多くのアナログ人間にとっての疑問は①ChatGPTって何ができるの?②生成AIってどんな種類があって何ができるの?③生成AIの歴史は?④有力プレーヤーはどの会社? といったあたりにあるだろう。

 そして、最大級の知りたいことは⑤私の仕事、ChatGPTや生成AIに取られてしまうの? であろう。本書はこれらにすべて答えてくれる。

 インターネットの世界では四半世紀にわたって検索の世界を牛耳ってきたグーグルも、AIではマイクロソフトの後塵を拝していることなどが紹介される。当然グーグルも巻き返しを図っているが。①~④については本書を読んでいただければ、と思うが、気になる⑤についての記述を紹介しよう。著者と対談したStability AI社のジェリー・チー氏の発言だ。

〈AIをうまく活用できる人が、できない人よりも、労働市場において有利になるのだと思います。インターネットを使える人の方が、使えない人よりも、労働市場において有利なのと同じです。他の人がAIを使っているのに、自分はAIを使わないと、自分の仕事力が他の人よりも劣ることになるでしょう〉

 本書を通底するのはAIの便利さを認めつつも、最終的には人間が判断しなくてはならない、ということだ。AIのことは優秀なアシスタントと評したり、飛行機の操縦士における副操縦士のような存在だと解説する。

 人間が介在しなくてはできないと思われがちな仕事でも、AIを用いれば可能。自動運転はその代表例だ。また、日本酒酒造で知られる「獺祭」がAIを活用して酒造りをしていることも紹介された。私も水耕栽培のトマト農家でAIを活用している話を取材したことがある。気温や湿度に応じてAIが適切な水やりをしてくれ、それで糖度の高いトマトが収穫できると農業主は語っていた。

 AIに仕事を奪われない結論も述べられており、全般的には「そこまで焦らないでいいよ。要はAIを使いこなす人材になってください」と提案している本だ。そして、以下が人間の存在意義となる。

〈きれいなPowerPointの資料は生成AIが作るのを支援してくれるようになります。コンサルタントや営業職、管理職などが磨くべきは、「この人が言うと心に刺さる」「納得感がある」と相手に思わせる、数値化されにくいコミュニケーション能力になるはずです〉 ★★(選者・中川淳一郎)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁