著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「地球行商人 味の素グリーンベレー」黒木亮著

公開日: 更新日:

「地球行商人 味の素グリーンベレー」黒木亮著

 8年前までテレビの仕事で、毎週のように飛行機や新幹線に乗っていた。わたしはテレビ局の孫請けの取材係。そんな末端にいても出張経費は会社持ちだった。

 今はフリーの文筆家、自腹で出かける身の上だ。高速バスやLCC、ドミトリー宿を駆使している。贅沢はできないが、「経費を会社に出してもらった以上、おめおめと手ぶらでは帰れない。成果を上げなければ」というプレッシャーがないから気楽である。取材がうまくいかなかったら一人でふて寝するだけ!

 さて本書は、海外市場の開拓に挑む味の素社員を追ったノンフィクション。舞台は1960年代のフィリピンから始まり、90年代のベトナムと中国、今世紀のナイジェリア、ペルー、インド、エジプト。時間空間ともに広く、読み応えたっぷりだ。

 ほこりっぽい喧騒の市場に足を運び、3グラム4円の小袋入り味の素の営業に励む男たち(時代と地域のせいか女性はほとんど登場しない)。はびこる模造品、ラマダンになると無断欠勤する部下、強盗団、革命……さまざまな壁が立ちはだかる。

 彼らが派遣される土地はいずれも巨大市場になる可能性を秘めていて、会社からは多額の開拓費が投下されている。おめおめと手ぶらでは帰れない。知恵を絞り靴底をすり減らし用心棒を雇い、なんとかして成果を上げるのだ。はー、会社員ってすごいなー。

 読後、本棚から高野秀行著「幻のアフリカ納豆を追え!」を引っ張り出して確認した。味の素に入社しアフリカで納豆を研究した高野さんの幼なじみ、その名は健ちゃん。やっぱりそうだ、この2冊はつながっている!(中央公論新社 2420円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  2. 2

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か

  5. 5

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  1. 6

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  2. 7

    三山凌輝に「1億円結婚詐欺」疑惑…SKY-HIの対応は? お手本は「純烈」メンバーの不祥事案件

  3. 8

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  4. 9

    佐藤健と「私の夫と結婚して」W主演で小芝風花を心配するSNS…永野芽郁のW不倫騒動で“共演者キラー”ぶり再注目

  5. 10

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意