「理由のない場所」イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳

公開日: 更新日:

「理由のない場所」イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳

 チョコレートクッキーの箱を手にした私が、近所の人が去っていくのを見ているこの場所で、16歳のニコライが「お母さん」と言った。彼がこう呼ぶのは、かまってもらえないときだけだったから私は驚いた。「あなたにそう呼ばれるのがどれだけ好きか、話したことなかったね」と私は言った。ニコライは「まさかここで会うとはね」と言い、「私たちどっちかのしわざ」と私は言った。この場所は明日、どこかになり、昨日どこかだったが--今日は決してどこかではない、どこでもないところという場所だ。わたしがここに来られる理由のひとつは、時間と縁を切ったからだ……。

 16歳の息子を自死で失った著者が、その悲しみと向き合いながら、亡き息子との対話をつづった比類なき作品。

(河出書房新社 1100円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    国分太一が社長「TOKIO-BA」に和牛巨額詐欺事件の跡地疑惑…東京ドーム2個分で廃墟化危機

  3. 3

    浜田省吾が吉田拓郎のバックバンド時代にやらかしたシンバル転倒事件

  4. 4

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 5

    「いま本当にすごい子役」2位 小林麻央×市川団十郎白猿の愛娘・堀越麗禾“本格女優”のポテンシャル

  1. 6

    幼稚舎ではなく中等部から慶応に入った芦田愛菜の賢すぎる選択…「マルモ」で多忙だった小学生時代

  2. 7

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  3. 8

    TOKIO解散劇のウラでリーダー城島茂の「キナ臭い話」に再注目も真相は闇の中へ…

  4. 9

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  5. 10

    フジテレビ系「不思議体験ファイル」で7月5日大災難説“あおり過ぎ”で視聴者から苦情殺到