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「景気はなぜ実感しにくいのか」前田裕之著

 好景気の実感なき物価高というのが大方の庶民の実感。ホントに景気はよくなっているのか?



「景気はなぜ実感しにくいのか」前田裕之著

 政府や日銀は「景気は緩やかに回復」と告げるものの庶民に実感はゼロ。1部上場企業以外のサラリーマンは「賃金が上がらず生活は苦しい」という実感の中でじっとガマンしている。政府がウソをついているわけでないのだとしたら、なぜ景気回復を実感できないのか。本書はまさにその問いを元日経新聞記者が解説する。

 たとえば景気が最悪の時期を脱したばかりなら、「景気回復」は真実だとしても庶民の実感は薄くても不思議ではない。高度成長期ならまだしも低成長の時代に景気の山と谷は生活実感とはズレるのだ。

 景気を測る指数、GDPなどの見方も解説。たとえば売り上げ低迷に悩む企業が人件費の引き下げなどに走れば生活は苦しくなるが、GDPはあくまで生産に注目をするため、こうした生活レベルの実態は表れにくい。むしろ最近の政府発表で使われるGNI(国民総所得)が国民の豊かさを測る場合には役立ったりするわけだ。

 経済理論と不況の関係など歴史的なこぼれ話も数多い。物価や景気をめぐる豆知識集として読んでも面白い。 (筑摩書房 990円)

「物価の歴史」平山賢一著

「物価の歴史」平山賢一著

 物価の歴史といっても昭和にいくらだった物が平成や令和でいくらになったか、という本ではない。人類の歴史は交換と市場の歴史。つまり物価の高い安いから「インフレ率2%」の是非まで、人類文明の歴史は「物価」の歴史とも言い換えることができる。

 そこで本書はなんと古代バビロニアの物価変動から現代までを、さまざまな事例を通して大胆に解説する。たとえば13世紀イングランドの物価上昇は、人口増加を背景とする交易の活発化で起こった。その陰には欧州で早婚化が進み、出生率が増加したという事情があった。

 江戸時代は武士階級が藩主から禄高つまり米(禄米)を受け取り、それを金融業の札差で換金するという経済の仕組みがあった。そこでは米価の上昇が実質賃金の上昇を意味したが、銭払いを受ける職人などの庶民は米価の上昇で実質賃金が下落した。本書は江戸末期の米や炭や木綿の価格を指数化し、物価の推移を棒グラフにするなど工夫が満載。

 著者は投資戦略のプロとして長年一線で働いた人だ。 (中央経済社 2860円)

「7つの安いモノから見る世界の歴史」ラジ・パテル、ジェイソン・W・ムーア著、福井昌子訳

「7つの安いモノから見る世界の歴史」ラジ・パテル、ジェイソン・W・ムーア著、福井昌子訳

 ちょっと前までの決まり文句に「卵は物価の優等生」があったが、本書の「安いモノ」は、この意味ではない。アメリカのエコノミストの著者らがあげるのは「自然、貨幣、労働、ケア、食料、エネルギー、生命」の7つだ。

 たとえば家事のような家族のケアのための労働は「有償労働」ではないため、長年無視されてきた。その労働も近代の資本主義的な産業システムの中でどんどん「奴隷制から組合による賃金労働までの労働者管理」の中で安価なものに一律化されてきた。自然でさえ、近代の資本制私有システムの中で昔ながらの共有地の存在がなくなり、資本主義社会の中産階級にとって安価な管理物になってしまったという。

 いまでは人間の体と生命でさえ、国家に認識され、差別や格差や学歴その他で序列化されたモノになっている。

 物価高に悩む現代人そのものが、実は現代の高度資本主義の下では単なるモノでしかないのだ。 (作品社 2970円)

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