「戦火のバタフライ」伊兼源太郎著

公開日: 更新日:

「戦火のバタフライ」伊兼源太郎著

 太平洋戦争末期。衛生兵の尾崎洋平は、医師の小曽根太郎と共に南方前線で増え続ける負傷兵への手当てを続けていたが、味方の命を絶つ手助けをするところまで追い詰められた末に、最後にたった一人生き残った。手元に残ったのは、小曽根に託された日記帳と万年筆。日本に戻った尾崎は遺族を探すが、小曽根の家族も東京大空襲で亡くなっていて、残っていたのは小曽根の妹のさくらと幸とその祖父だけだった。

 尾崎は戦後、厚生省職員となった自分ができることとして、民間戦争被害者への国家賠償の実現に向けて動き出す。ところが、脅しなどの不審な出来事が勃発。さくらの署名運動にも邪魔が入り、何らかの力で妨害されていることを確信する。戦火を生き延びた者たちは、死者から託された思いをつないで、天国のような国をつくることはできるのか──。

 2013年「見えざる網」で第33回横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビューした著者の最新作。言葉に残さなければ失われてしまう記憶の断片が、戦時中の古いノートを発端に語られていく。次世代へと希望をつなごうと願う人々の思いが胸に迫る。 (講談社 2585円)


【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  2. 2

    視聴率の取れない枠にハマった和久田麻由子アナの不運 与えられているのは「誰でもできる役割」のみ

  3. 3

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 4

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  5. 5

    田中将大が楽天を去った本当の理由…退団から巨人移籍までに俺とした“3度の電話”の中身

  1. 6

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 7

    あのちゃん追い風だった女優業に暗雲の炎上!「嫌いな芸能人」発言で反撃される痛恨

  3. 8

    高市首相応援議連「国力研究会」発足 “大政翼賛会”に入会しなかった70人と主な議員の名前

  4. 9

    巨人“育成の星”のアクシデントに阿部監督は顔面硬直、原辰徳氏は絶句…桑田真澄氏の懸念が現実に

  5. 10

    出口夏希の“男選び”がもたらす影響…伊藤健太郎との熱愛報道と旧ジャニファンが落ち込む意外