元テレ東・高橋弘樹×元横浜DeNA・高森勇旗「仕事の辞め方」…“お金”や“成功”の不安とどう向き合う
誰にでもいつかは「退きどき」がやってくる。古きよき時代の“サラリーマン社会”だったら、大半の人にとっての「そのとき」は定年退職だっただろう。だが、いまや自分の意思で「そのとき」を早める人もいれば、自分の意思、年齢とは関係なく唐突に「そのとき」を突きつけられる人もいる。いずれのあとにも待ち受けているのは不安との戦いだ。では、そうした戦いに勝ち、新たな人生、働き方を切り拓くために必要なものとは何なのか?
会社の出世レースから途中離脱した元テレビ東京のヒットメーカーと、一流選手への道に見切りをつけ、自由とやりがいを求めて新天地に飛び込んだ元プロ野球選手。さまざまな困難にぶつかりながらも、着実に人生を軌道に乗せている2人は果たして、どう不安に打ち勝ち、どのように異業種への挑戦で成功を収めたのか。
早稲田大学ビジネススクール教授・入山章栄氏の最新刊『非常識な「ハイブリッド仕事論」』(祥伝社)から抜粋してお届けする。
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入山章栄 髙橋さんが立ち上げた「ReHacQ(以下、リハック)」のチャンネル登録者数は156万人(2025年8月6日現在)を突破し、急成長メディアとして注目されています。今後、どのようなチャンネルにしていきたいですか?
高橋弘樹 テレビやラジオはメディアとして確固たる地位を築いていますが、ウェブ回りにそういう会社はまだ少ない。いま、「リハック」のほかに「PIVOT」や「NewsPicks(以下、ニューズピックス)」といったメディアがいくつかありますが、あそこに出演しなければならないみたいな“社会の公器”として意義のある動画メディアはまだないと思います。いろいろなところと連携しながら、ウェブ界隈にきちんとしたメディアをつくっていきたいというのはあります。
入山 横浜DeNAベイスターズでプロ野球選手だった高森さんは現在、ビジネスコーチという異色の経歴の持ち主です。どのような経緯でいまのキャリアに行き着いたのですか?
高森勇旗 野球を辞めたあと、ライターやアナリストの仕事を始めましたが、もっとストレスやプレッシャーのかかる仕事がしたいと思うようになりました。そこで、企業の経営者に近いところで、コンサルタントのようにビジネスのいろいろな側面にかかわってみたいということでいまに至っています。これまで50社以上の経営改革などに携わってきました。
入山 ベイスターズに6年間所属して、成績はどうでしたか?
高森 これは誇りをもって言いたいのですが、プロ通算1安打です。ヒット1本だけで引退しました。もっとも僕にとっては2本でなく1本で本当によかったと思っています。引退と言えば聞こえがいいですが、要はクビになっただけなんですが。
入山 プロを通じて2軍の時代が長くて、1軍に上がったときにたまたま1回だけ打てたということですか?
高森 まさに、その通りです。プロ3年目のシーズンが一番調子がよくて、2軍で本当に打ちまくりいわゆる“無双状態”でした。ベイスターズの2軍が所属するイースタンリーグの「技能賞」と、イースタンとウエスタンの両リーグから将来の活躍が期待される選手に贈られる「ビッグホープ賞」の両方を取ったのは、イチローさん以来のことでした。その年、最後の2試合だけ1軍に上げてもらい、プロ生活唯一のヒットを打ったのです。それが選手としてのピークでしたね。そこから奈落の底に転落していきます。別にケガをしたわけでもなく、僕が勝手に転げ落ちていって最終的にはクビになりました。