伊丹監督「お葬式」と同じシチュエーション喜劇

公開日: 更新日:

「Shiva Baby」

 コメディーは国境を越えない。小生かねての持論だが、今回はどうだろう。来週末封切りの「Shiva Baby シヴァ・ベイビー」である。

 シヴァはユダヤ系のお弔いの儀式。日本なら法要後の「御斎」だが、親類一同が集った席では故人のことなど覚えてもいない若者に限って「あら~××ちゃん、大きくなって。いま大学生? 就職は?」などと質問攻めに遭うのがお決まり。不運にもその標的になった女子学生が本作の主人公だ。同い年の女子は有名ロースクールに進学なのに自分は就職にあぶれて親がかりという体たらく。おまけにシヴァの席では出会い系アプリで知り合ったパパ活相手にまで出くわす始末。──というわけで前宣伝は「パパ活女子」を強調しているが、実は伊丹十三の初監督作「お葬式」とそっくり同じシチュエーション喜劇だ。

 製作は2020年だからアメリカ映画にしては日本公開が遅い。理由は全編を満たすユダヤジョークが日本には不向きとの判断からだろう。現に監督・脚本のエマ・セリグマンは実にユダヤ系らしい“自他虐ギャグ”をちりばめ、主演のレイチェル・セノットが強烈にこれを体現する。ちなみに本作で(アメリカでは)大ブレークしたセノット、どう見てもユダヤ系なのに実はアイリッシュ+イタリア系というのでSNSを騒がせたほどだ。

 とはいえ、この映画をアメリカ版「お葬式」として見るなら笑いも国境を越えて普遍的ということになるのか……といえば果たしてどうだろう。

 むしろエッセイストとしても異色の個性派だった伊丹十三のセンスこそ“純ジャパ”の対極だった、という気がする。

伊丹十三選集」全3巻(岩波書店 各巻3630円)の端々に見え隠れする繊細すぎる自意識とそれゆえのユーモアこそ、なによりの証拠というのは少々強引だろうか。 〈生井英考〉

◆27日(金)から新宿武蔵野館ほかで全国順次公開

【連載】シネマの本棚

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「Hey! Say! JUMP」山田涼介のグループ内「独り勝ち」で広がるメンバー間の“収入格差”

  2. 2

    TBS「サンデーモーニング」は高市政権に狙い撃ちされないか…高視聴率だからこそ心配だ!

  3. 3

    熱意と覚悟が欠如…国内男子ツアーの衰退を加速させる日本ゴルフツアー機構の“残念さ”  

  4. 4

    河合優実は帰国子女が2割を占める“公立のインター”都立国際高校のダンス部で活躍

  5. 5

    “茶番”自民党総裁選の広報係? TBS系「ひるおび」が連日の大ハシャギ…ふかわりょうは痛烈批判

  1. 6

    【感謝】「もっと沢田研二~」はこれで最終回。そして来週からは……

  2. 7

    音楽番組がまた姿を消す「with Music」「週刊ナイナイミュージック」がたった2年半で撤退

  3. 8

    「エプスタイン文書」名前記載日本人のジャニーズ“顧問歴”が波紋…ファンの擁護と芸能界に広がる影響

  4. 9

    中道にとっての当面の党再建策は「学会による落選組の支援」と「議員の差し替え」

  5. 10

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁