ニッポン経済曲がり角(1)日本経済低迷の原因は希望的観測への同調メンタリティー

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「日本経済を診る」齊藤誠著

 街なかのランチタイムの値上げ幅の大きさに驚く日本経済の現状。このままでいいのか。

  ◇  ◇  ◇

「日本経済を診る」齊藤誠著

「診る」と書いて「みる」と読む。本書の印象はまるで開業医が長年の持病がある患者をかかりつけ医として診断し、アドバイスする。そんな光景だ。

 著者は「日本経済に関するマクロ経済データを長く、広く、頻繁に診ている数少ない経済学者」で「医者が聴診器をあてて患者を診ているニュアンス」を自任する。

 なにしろ「マクロ経済データであれば、物価、金利、株価、為替、労働、賃金循環、国際収支など、なんでもござれ」「金利、株価、為替などは日々、政府や日銀の統計は月々や四半期、ときには年々」というのだからまさにかかりつけ医だろう。

 日本経済は長年深刻なデフレにあったといわれるが、著者は1980年から2024年までのCPI(消費財全般の物価水準の指標)をもとに「せいぜいマイルドなデフレ、あるいは、いっそのこと物価安定といったほうがふさわしい程度」だという。

 しかしCPIがインフレ状態になってからも人々の「デフレ感覚」は消えなかった。それは実質賃金の長期停滞、つまり物価上昇に見合うような賃上げが実現していない状態を意味するが、だからといって短兵急に賃上げ分を販売価格に転嫁したりするのは間違った処方箋になる。

 学者の前に銀行系エコノミストの経歴を持つ著者の説明はわかりやすく、実感に富む。日本経済の低迷の原因は独裁者の暗愚ではなく、コロナ禍を経ていっそう強まった「希望的観測への同調メンタリティー」にあるという結論には背筋が寒くなること請け合いだ。 

(筑摩書房 1320円)

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