「翔べ、ワイルド・スワン」ユン・チアン著、土屋京子訳
「翔べ、ワイルド・スワン」ユン・チアン著、土屋京子訳
1976年、毛沢東が死んで文化大革命が終わったあと、中国全土で実施された海外留学の選抜試験に合格した著者は、1978年にイギリスへ飛び立った。現地で中国人留学生に対する大使館の監視の目が厳しく行動も制限されたが、著者はイギリス社会に溶け込もうと冒険を重ね、心身共に自由を獲得していく。
最初の結婚と離婚。そして再婚。著者が母親をロンドンに招いたとき、祖母の話を聞いたのをきっかけに、著者は「ワイルド・スワン」の執筆を決意する……。
本書は中国激動の20世紀を生きた祖母と母と著者を描いた「ワイルド・スワン」(1993年刊)の後に続く物語。著者の半生と家族との関わり、中国の激変を描く。
かつての恋人との関係、乳がんの手術、毛沢東の自伝を書くための中国での取材の日々。共産党員だった両親の過酷な人生、中国の変貌や公安による干渉なども同時に描かれ、日本がバブルに浮かれていた時代に、中国では“等級”が残り、毛沢東時代の記憶が長く尾を引く人々がいたことに、中国の真の顔を見た思いになるだろう。
著者を常に励まし、彼女の身の安全を守るために万難を排して必要な手を打った、聡明で頼もしい母親の存在が印象的。本作におけるもうひとりの主人公ともいえそうだ。 (光文社 2970円)



















