板坂康弘
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板坂康弘作家

東京都出身。週刊誌ライターを経て、阿佐田哲也、小島武夫が結成した「麻雀新撰組」に加わり、1972年創刊「近代麻雀」の初代編集長。小説CLUB新人賞を受賞して作家デビュー、著書多数、競輪評論でも活躍。

<4>記憶に残る負けがある「麻雀名人戦」第2期の美しい牌譜

公開日: 更新日:

 何ともややこしい報道ぶり。麻雀の阿佐田哲也のイメージが浸透していたとわかる。

 私が書いておきたいのは、阿佐田哲也さんは雀豪ではなく、常勝の打ち手でもなかったということ。無論、弱かったと言うつもりはない。勝ち負けのラチ外にいて、自分の麻雀を打ち続けたと言うべきか。

 強面の勝敗にこだわる打ち手ではなく、長手数で丁寧に手役を育てる麻雀だった。

 徹夜麻雀も、よく付き合ったが、彼に大敗したという記憶はない。

 だが、何事にも例外はある。青森競輪場で特別競輪が開催された。私は5日目の準決勝に合わせて青森入りした。来賓席に顔を出すと阿佐田さんと、後に直木賞作家になる若き日の伊集院静さんがいた。2人とも早くに青森入りしたのか、疲れた表情。その夜は、ねぶた祭りの囃が聞こえる雀荘で闘牌した。

 物書き3人と、競輪新聞社の社長がメンバーだった。スタートして私は目を剥いた。

「どうしたんですか? 阿佐田さん」

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