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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

まともな人のまっとうな話 五輪辞退のミャンマー水泳選手

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 情けなくて怒る気もしない。新型コロナ重症患者が連日1000人以上、集中治療室も看護師もまったく足りない。入院先のない高齢者も毎日のように亡くなっている。都市の医療現場は限界だ。なのに、五輪組織委員会が看護師500人を大会に派遣するよう要請した。どの口でぬかしたんだか。派遣などできるわけがない。しかし、首相は「国民の生命と健康を守り、大会に全力を尽くすことが……」とタコのロボットみたいな顔で風呂の中で屁をこいたような念仏を唱える。医療現場も「五輪はやめろ」と叫んでいる。が、政府は「主催者でないから判断する立場にない」と。野党たちが何を問いただしても無駄だ。政治自体、狂っているのだ。

 そんな中、まともな人のまっとうな話を。先月の某紙夕刊に載った記事を切り抜いて、部屋の壁に貼っておいた。ここ一年、コロナのおかげで、新聞各紙を買ってきて隅々まで読むよい癖がついた。スマホやパソコンで世界の出来事をのぞき見しても、頭の中には残らない。読み込むのではなく、流し見してるだけだ。紙媒体の活字は何十回でも読んで記憶できる。

 五輪に出場しないと辞退した若者がいる。ミャンマーの水泳選手だ。その意思は明白だ。2月の国軍クーデター後から市民への弾圧が続いていて、国軍や警察の武力行使で(9日現在で780人も)犠牲者が出ている国情で、「国民の血にまみれた国旗の下で行進したくない。平和を掲げるはずの五輪なら、そんな国軍の代表になって参加するのはおかしい、泳げない」と思ったからだ。ウィン・テット・ウーという自由形の期待の星だ。「IOCには、ミャンマーの五輪参加は認めないようにしてほしい」と求めた。そして、祖国の民主化に向けて闘いたいと。とてもしっかりした若者だ。

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