志村けんさん追悼秘話<中>志村けんさんは「隙間があったらドンドンなんかやってこいよ」と

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 志村さんは、いつも小さく細かく怒るんです。お酒の作り方、食事の出し方、衣装の用意の仕方とか。「前にも言ったよな、なんべん言ったら分かるんだ」とか。例えばコントの収録の最中、「次、何だ?」と言われて、「えっと……ちょっと待ってください」なんて台本を確認しようものなら、「次の次まで考えとけって言ったろ」と怒られます。その瞬間、空気がぴーんと張り詰めて、怖かったですね。

 でも、しばらくすると「隙間があったら、ドンドンなんかやってこいよ」と言っていただけるようになってきたんです。

 それで徐々に、例えば「山崎、コーヒー」と言われたときには、「さっき、いただきました!」と返し、「そっか、じゃあいいや……ってバカやろう、俺が飲むんだよ!」なんてやりとりができるようになってきました。もちろん空気を読みながらですよ。それで周りのスタッフさんがドッと笑う。志村さんはそれを見て満足されているようでした。

 僕、どうやら、志村さんにとって、いいイジられ役だったみたいです。志村さんはネタ会議や収録のときはとても厳しいんですが、それ以外はイタズラでおちゃめなところがありました。収録後はお酒の席にも連れて行っていただいたんですが、「山崎、飲め。一気に飲めよ」と言われて、手渡された焼酎の水割りをグッと飲むと、これが物凄く濃く作ってある。僕が思わず、ベッと吐き出してしまうと、「おまえ、きたねえなあ」なんて言いながら、とても楽しそうでした。僕は僕で、飲みの席に連れて行っていただく時には、志村さんを笑わせるネタを3つは考えておくようにしていました。

エアガンにはまっていた志村けんさん

 それがだんだんエスカレートしていったのが、エアガンです。

 一時期、志村さんは、番組で取り上げたエアガンにハマっていて、いつも持ってたんです。で、ネタ会議中とか、ふざけて僕を撃ちまくるんです。

 フジテレビ入りするときも、志村さんのリムジンが入ってくるのを見て、僕が「志村さん、来ました」と伝えると、警備員さんや受付の方が慌てて隠れます。で、僕がドアを開けようと車に近づくと、パワーウインドーがウィーンって下がる。でも出てくるのは、顔じゃなくて銃口なんです。それで僕が撃たれまくってのたうち回る。エアガンはどんどんエスカレートしていって、「ゴルゴ13」みたいな赤いレーザーポインター付きのライフルになったり、マシンガンになったりしました。

 僕は志村さんを会議室まで送り届けると、玄関に戻り、「ありがとうございました~」とか言いながら、弾を拾って、またエアガンに詰めるんです。自分が撃たれるために(笑い)。その頃の僕は、いつ撃たれてもいいように、マスクとダウンジャケットを買ってもらって、いつも装着していました。

 しかし、ある時、僕、遅刻してしまって。ご存じの通り、志村さんは遅刻には非常に厳しい方です。志村さんは爆発寸前で、開口一番「おまえ、何やってたんだ!」と言われましたが、「マスクとダウンジャケットを忘れたので、取りに帰ってました」と理由を言ったら、「そうか、それじゃしょうがねーな」と許されました。

「山崎がいると、志村、楽しそうだよな」と加藤茶さんに言っていただいたり、「兄さんはなんでそんなに志村さんにイジってもらえるんですか」なんて、後輩の付き人に言われたこともありました。

 僕、打たれ強いからなのかもしれませんが、自分としては必死なので、理由はよく分からないんですよね(笑い)。  =つづく

(聞き手=平川隆一/日刊ゲンダイ)

▽やまざき・まさや 1970年1月18日、横浜市生まれ。お笑い芸人、タレント。「ジョーダンズ」としてコンビ活動したが2007年解散。現在、J:COMチャンネル「デイリーニュース」でキャスターを務めるほか、横浜市内で「山下公園花火大会」「横浜銀蝿」「DeNAベイスターズ」関連の各種イベントの司会などでも活躍。 

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