“連ドラの鉄人”内藤剛志さん「アクターズ・スタジオ」で若者にチャンスを

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 かつて「27クール続けて連続ドラマ出演」という日本記録を打ち出し、現在も出演作が絶えない内藤剛志さん。4月14日には主演ドラマ「警視庁・捜査一課長season6」(テレビ朝日系)がスタートする。「連ドラの鉄人」が掲げるのは「後進の育成の場をつくる」という夢。その思いを抱いた理由とは……。

 ◇  ◇  ◇

■役者を育てるシステムが少ない

 父親がNHKの技術職員だった影響で子供の頃から「役者」という職業を身近に感じていました。児童劇団に所属し、子役としてドラマにも出演しています。音楽に目覚めてミュージシャンを志した時期もあるけれど、1980年に映画でデビューしてから40年以上にわたって役者の道を歩んでいる。だから、それなりに長くこの世界を見てきたと思うんですけど、最近感じるんですよ。日本には役者を育てるシステムが少ないって。

 もちろん無名塾など有名な養成所もあります。僕が所属した文学座付属演劇研究所は樹木希林さんから長谷川博己くんまで何人もの実力派が出ている。ただ、今はアイドルやモデルから演技の道に入って現場でだんだんと力をつけていくケースの方が一般的になっているように思う。

 理由のひとつに欧米のような国公立の演劇学校がなく、プロへの道筋がつくられていなかったことが考えられます。私大には演劇学科がありますが、役者の世界にあまり直結していないんですよね。最近は専門職大学創設などの動きもあるものの、情熱ある若者にチャンスが少ない今の状況を残念に感じています。そんな思いから僕は役者を育てる新しい仕組みをつくりたいんです。学校をつくるのが難しいなら、大学と芸能事務所がタッグを組んで育ててもいいと思う。実は以前ある学校と何かできないかと話をしていたんですが、コロナ禍で頓挫してしまいました。

■デニーロやショーン・ペンが学生の質問に真摯に答える

 理想は「アクターズ・スタジオ」の授業。マリリン・モンロー、アル・パチーノ、ロバート・デニーロといったそうそうたる名優を輩出しているアメリカの俳優養成所です。ここには役者や監督が生徒の質問に答える時間があって放送もされています。生徒は「セリフをどうやって覚えるのか?」「役作りのコツは?」など何を聞いてもよく、その質問にデニーロやショーン・ペンが真摯に答えてくれる。これは生徒にとって大きな学びです。

藤田まこととの共演がひとつの転機

 というのも、まさに僕自身がそうだった。僕の役者人生は20代半ばで藤田まことさんと共演したことがひとつの転機でした。駆け出しの僕は「演技は魂だ!」と勢いばかり。ところが、藤田さんはセリフ回しが明確で動きにも無駄がない。視聴者にどう見せるべきか、細部まで計算して演技されていたんです。これがプロの技術なのだと鳥肌が立ちました。その後も渡瀬恒彦さんや里見浩太朗さんら先輩方と共演し、雑談をする中に多くのヒントがあって、それが今の自分に生きている。だから僕も現場の空気感を後進に伝えていきたい。

 先輩方の名の前でおこがましいことを言ってますが、僕もさまざまなドラマに出演し、何万回もカメラの前に立っています。積み重ねた経験の中には才能や感性とは別の役者に必要な技術がある。例えば刑事ドラマは犯人、容疑者、被害者と人物の名前が多く、限られた時間で覚えるのが大変なんですが、これもちょっとしたコツがある。そういう現場で生きる技術は大学や養成所ではなかなか学べないと思う。

 刑事ドラマといえば、船越英一郎くんが学生から「火曜サスペンス劇場と土曜ワイド劇場の違いってあるんですか」と聞かれたことがあるそうです。番組は終了したけど面白い質問ですよね。ちなみに船越くんはちゃんと答えたそう。僕も違いを意識して演じ分けていたので夢が実現したらじっくりお話ししましょう。

■14日スタート「警視庁・捜査一課長season6」は度肝を抜く仕掛けが…

 今、撮影している刑事ドラマは4月14日にスタートする「警視庁・捜査一課長season6」です。僕が演じる叩き上げの捜査一課長・大岩純一が捜査員たちと東京で起こる事件を解決していくシリーズで、今回はみなさんの度肝を抜くような新しい仕掛けを用意しています。普通の刑事ドラマにはない発想ですが、楽しんでもらうために今後もいろいろ挑戦したい。

 ただ、その中で僕たちがつねに心がけているのは見ている方に希望を伝えること。大岩には「必ずホシを挙げる!」という決めゼリフがあります。僕はここに人の命の尊さを感じ、だからこそ生きている自分たちが解決していくんだという覚悟の気持ちを込めている。パンデミックに戦争と世界が不安定な今だからこそ、この言葉を強く発信していきたい。そして、見た後に「面白かった」って笑顔になってもらえたらうれしいですね。

(聞き手=中川明紀)

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