著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

まさに中学受験? 大企業があげる過去最高益と危機的な生活苦が同時発生する現代ニッポン

公開日: 更新日:

 見慣れない四字熟語のインパクトに惹かれ、書店でこの本を手にとった。やはりタイトルの力って大きいなぁ、としみじみ。教育ジャーナリスト・おおたとしまさの新著『中受離婚』(集英社)のことである。もちろん「離婚」は分かる。では「中受」の2文字は何を意味するのか。骨身に沁みるほど知る者が「ああ……」と言葉にならぬため息をつく一方で、わからぬ者はもう何が何やら、手がかりの尻尾さえつかめないのではないか。

 答えはサブタイトルにある。「夫婦を襲う中学受験クライシス」。そう、中受は中学受験の略称。この本は子の中受を機に離婚という人生の選択を突きつけられた夫婦3組のセミフィクションなのだ。セミというのは実話ベースだから。著者は実在の3組の夫婦と子どもを徹底的に取材したうえで、高いリーダビリティ獲得の手段としてフィクションの体裁をとったというわけだ。

 まずぼくも立ち位置を明示しよう。中受、経験してます。誰がって自分が。40年以上前の地方都市の話だけど。ただ自分の子どもたちは中受とは縁のない人生を歩行中。ゆえに「中受の親」の気持ちを理解しているとは言えません。それでも首都圏の中学受験が過熱している現況は、ヒィーと悲鳴を上げている知りあいの夫婦たち(ひと組やふた組ではない)を通して伝わってくる。事実、首都圏模試センターによれば、2023年の私立・国立中学受験者数は過去最多の5万2600人、受験率も過去最高の17.86%だという。中受と縁遠い世代や地域にお住まいの方がたには驚きの数字ではないだろうか。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  3. 3

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  4. 4

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  5. 5

    ドジャース大谷が佐々木朗希への「痛烈な皮肉」を体現…耳の痛い“フォア・ザ・チーム”の発言も

  1. 6

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  2. 7

    高市早苗氏は大焦り? コバホークこと小林鷹之氏が総裁選出馬に出馬意向で自民保守陣営は“分裂”不可避

  3. 8

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった

  4. 9

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い

  5. 10

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督