今にも通じる重苦しい時代にヒットした音楽だからこそ、振り返る意味も価値もある
そういえば「沖縄海洋博」もこの年だった。72年にアメリカから返還された沖縄で行われた、いわゆる「万博」。大盛りあがりだった70年の大阪万博から、たった5年しか経っていないことが影響したのか、そもそものコンテンツの問題か、評判があまりよろしくなかった点については、今の大阪・関西万博とちょっと似ている。
そんな中、この年発売の大ヒットといえば、レコード大賞を取った布施明「シクラメンのかほり」に、小坂恭子「想い出まくら」、沢田研二「時の過ぎゆくままに」など。つまりは、先のような時代背景に合わせて、内省的でジメッと暗い曲がヒットしたのだ。
また拓郎・陽水風のフォーク調が、音楽界全体に浸透していたこともよく分かるラインアップである。
……とまぁ、そんな時代だったのだ。「歌は世につれ」で、今後この連載で紹介していくヒット曲たちが生まれた前提として、令和7年にも似た、こんな重苦しい時代の空気があったということは、知っておいていただきたいところである。
あっ、サイゴンが陥落して、ベトナム戦争が終わった年でもあったな。75年が50年後の今と本当に共通するのなら、ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナの戦争も終わってほしいと心から願う。=つづく