(1)「朝立ち、ありますか?」…男の生理が消える時
「更年期」といえば女性のもの。そう思い込んでいる男性はまだ多いのではないでしょうか。けれど実は、男にも“生理”がある。その正体は「朝立ち」です。
今年6月、政府が閣議決定した「骨太の方針2025」に「男性更年期障害」という言葉が初めて盛り込まれました。国の公式文書に明記されたことで、ようやく男性の更年期が社会的な課題として認められたのです。
半世紀前の日本医学会総会で、泌尿器科医の熊本悦明(私の父)が「男にも更年期はある」と発表した際には、「生理のない男に更年期などあるわけない」と笑われたといいます。
当時は血液中のホルモンを測定することも難しく、議論はかみ合いませんでした。ところがいまや、テストステロンという“元気ホルモン”の研究は飛躍的に進み、加齢やストレスでこのホルモンが低下すると心身に不調が出ることが明らかになっています。
そして、男性更年期障害という疾患名も広く知られるようになってきました。
しかし、父が生きていたら「まだまだだ」と言ったでしょう。これまでもメディアで男性更年期障害は取り上げられて話題になるものの、いつも一過性で終わってしまい、定着することはありませんでした。社会の理解が少しずつ広がってきたのは確かですが、十分とは言えません。