渡辺えりさん「恋人と手をつないだりイチャイチャしてみたい。認知症と思われるかしら(笑)」
山形オールロケの映画を撮る
これからやりたいのは私が岸田國士戯曲賞をいただいた「ゲゲゲのげ~逢魔が時に揺れるブランコ~」の前に書いた作品「夜の影 優しい怪談」と、「夢ノかたち~私の船~」「夢ノかたち~緑の指~」という前後編の連作です。「夢ノかたち」の後編「緑の指」は前編が終わってから書いたのですが、消化不良に終わった。それで「緑の指」を書き直してもう一度前後編通してやりたい。
「緑の指」は種に触れると花を咲かすことができるというフランスの有名な反戦童話です。戦士が銃で撃ち合っている時に指を触れると緑が出てきて戦争をなくす、少年の話です。平和を祈る暗喩なんです。できれば来年の春くらいには再構築したいですね。
まだ公表していない芝居もあります。まだ一回も共演したことがない大先輩の役者さんが新作を書いてくださって、やるのは来秋くらいです。もう50年以上も前から一緒にやろうと言っていた夢がやっとかないます。亡くなった中村勘三郎さんとは歌舞伎の新作を書くと約束していたのが実現していなかったけど、再来年にはやりたいです。
60代で故郷の山形市から協賛金をもらい、全編山形ロケの映画も撮る予定でした。ところが、時間が取れなくて、気がついたら70歳を過ぎていた。なので、今度こそ企画を立て直し、山形オールロケの映画を撮るつもりです。
内容は演劇をやりたい山形の少女、つまり私が東京に出てきて演劇をやるまでの話です。時代設定は昭和48年。その時代に山形でどんなことがあったのか。シベリアに抑留されていた人が帰ってきて気が狂うとか、集団見合いで中国や韓国から嫁に来たけど、うまくいかなくて絶望する……。戦後の問題点を踏まえながら、山形の過疎の村がその頃、どんなふうだったのかをユーモアを交えて描きたい。
当時、「主演をお願いします」と言っていた方も10年経って同じ役はできないですからね。その時にやらないと実現できないことが多いんです。今できることは極力、今やることです。
■暮れには古希を祝うコンサート「70祭」を
他にもやりたいことが多いのに、できなくてむなしくなることがあります。今は独身じゃないですか。恋人がいて楽しんだという経験がないのがね……。今からそれをやるのは遅すぎる気もする。でも、恋人がいて、手をつないだり、イチャイチャするっていうのをやってみたい(笑)。そんなことをやったら、認知症と思われるかしら。
「少女仮面」の中に「そこいらの男の子と死ぬの生きるのってジタバタしたいなあ」っていう春日野のセリフがあることに気がつきました。私が思っていることと同じ。ビックリです。
世の中には年を取って恋人もいなくて、死んでいく人が多いじゃないですか。女の人はとくにね。そういうことだから、熟年離婚する女性が多いんじゃないかな。お見合いで結婚して、夫には全然優しくしてもらえず、このまま死んでいくのかと思ったら嫌になる、ということでしょ。
日本の男の人は女性に本当に不親切。女は親切にされた思い出を残して死にたいのよ。ヨーロッパとかタイとか、向こうに行くと男の人はとても親切です。日本でそういうことがあると、ゲイの人だったりしますからね(笑)。
今年の暮れには2日間、古希を祝うコンサート「70祭」をやる予定です。司会は山形出身のテツandトモ(テツは滋賀出身)、頭脳警察、ロケット団、橋本マナミちゃんたちが来てくれる予定です。
(取材・文=峯田淳)
●唐十郎追悼公演「少女仮面」(6月11~22日、下北沢ザ・スズナリ)