令和ロマンくるま、吉本退所でも絶好調の今。もう一度「M-1」優勝を狙ってみてはどうか
令和ロマン・くるまが復帰
4月末で吉本興業との契約を終了した令和ロマン高比良くるま。一時期活動休止していたが、5月末には復帰。現在、精力的に活動の幅を広げており、自粛前にも劣らない影響力を見せている。
そこで今回は、かつて年間100本以上のライブに出演し、自身もライブ主催者の経験もあるという現役の芸人・帽子田が「令和ロマン・くるまが失速しない理由」について解説する。
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吉本退所で仕事激減するのが普通だが
令和ロマン・高比良くるまの吉本退社(という名のクビ)から約一カ月半経った。吉本という巨大事務所を決して円満ではない理由で辞めたことで、活動の幅が狭まったりするのではないか。令和ロマンファンだけでなく、お笑いファンも皆この点について心配していたと思う。
現にこれまでに吉本を退社した人の大半は仕事が減ってしまっていた。例えば一時代を築いた元極楽とんぼの加藤浩次さんでさえ、独立後に「スッキリ」が終わり、グッと露出が減ったような気がする。事務所を移籍したハリセンボンさんも一時期仕事が激減したし、かなりの実力者でも吉本を辞めた後は失速した感がぬぐえないのは事実だ。
一方、くるまはどうだろうか。驚くことに、「吉本を辞めてからの方がイキイキとしているしている」感があふれている。「吉本」という枷がなくなって、動きやすくなったようにさえ思える。
ここでいう「枷」とは、「極度のコンプラや偉い人の顔色を伺わなくなってよくなった」ということだ。
枷がないことで「100%の実力」を発揮できる
くるまは吉本の劇場愛が強いタイプの芸人だったので、「吉本を憎んでいる、辞めたかった」ということはもちろんないと思うが、枷がないフリーの状態の方が100%の魅力を出せるタイプの人間だったのかもしれない。
不祥事の末の退所にも関わらず、YouTube上で自らの退社をいじりまくっているのも興味深い。ちょっと外部からは触れにくい「くるまが吉本を辞めたことで、4億8000万円を貰い損ねた」「ケムリは人質説」などの都市伝説じみたネットニュースも自分たちで検証したりしていて、くるましか出来ない芸を楽しそうにやっている。
引きずってもいないし新たなお笑いの形を見つけていて、さらに再生数も回りまくっているので、テレビの露出こそ減ったかもしれないが「失速した」感は全くない。このネット戦略も上で名前を挙げた加藤さんやハリセンボンさんとも違うルートをたどった一因だと思う。
給料が数十万→億に変わるケースも
それに、吉本を辞めて仕事が減っても、逆に給料が増えるというケースもある。特にYouTubeに強い芸人はその傾向が多くみられる。
所属していれば、吉本のスタッフを使わなくてもマージンを抜かれるため、辞めれば収益すべてが貰えるので当たり前の話だ。それに仕事のギャラも自分で納得した額に交渉できるので、仕事の本数は減ってもギャラは増えるなんてこともあるらしい。
昨年退所したなかやまきんにくんは、「吉本のときは月給数十万だったのが、辞めてから億を稼ぐようになった」とテレビで他芸人が語っていた。吉本を辞めることでこんな夢みたいな話もある。くるまも吉本時代より制約がなくなって、時間にも余裕ができた上で給料が増えたりしたら、結構単独勝ちかもしれない。
一方、ライブ本数が減少しているデメリット
ただやはり、全てが良いことばかりではないようだ。吉本在籍時は数十本あったライブがわずか数本にまで減少した。漫才が好きな令和ロマンにとっては、出られるライブが減ったという点だけは厳しそうだ。
「吉本の劇場には基本的には所属芸人以外は立てない」という厳密なルールが去年明言され、「吉本鎖国の変」と芸人やお笑いファンの間で大きな話題になった。一応「基本的に」ということで他事務所の芸人が出られないわけではないが、数年前よりは確実に難しくなった。ちょっと揉めたくるまの出演はハードルが高そうだ。
そうするとくるまは吉本以外のライブ制作団体にオファーされるか、自分でライブを主催するしかない。退所後はライブシーンで引っ張りだこになるかと思いきや、現状は意外とそうでもない。おそらくライブ制作団体はまだ遠慮というか様子見しているのだろう。
稼ぎや露出減の心配はしなくていいが、舞台数だけがファンの心配事になっている。やっぱり個人的には令和ロマンの一番の強みは漫才だと思うので、外野ながらこればっかりはもったいないと思う。
もう一度M-1に出て優勝するのはどうだろう
そこで提案なのだが、もう一度M-1に出て優勝するのはどうだろうか。三連覇となれば、やはりライブシーンも無視できないし、かなり話題にもなるのは間違いない。ちょっと突飛な思いつきだが、令和ロマンならできそうと思ってしまうのもすごいところだ。
何はともあれ、事務所に所属せずフリーに好きなことをやっていくほうがくるまにはあっていると思う。今後の新しい芸人としての道を切り開いていってくれそうで期待したい。
(帽子田/芸人、ライター)