【見上げてごらん】人生に疑問を感じたときに見る孤独なおじさんのドラマ
「夢と折り合いをつけながら生きる人たちの物語」
土屋、吉住、潮田、山田のそれぞれのキャラと境遇を描き、一種の群像劇のように物語が展開する。注目はそれぞれの人生模様だ。
土屋は万年アシスタント、吉住は大家ながら連載の結末に人知れず悩んでいる。潮田は上司から「おまえは何をやりたいんだ」と詰問され、返す言葉がない。山田はミーハー感覚で漫画に取り組んでいる。
四者四様の生きざまのなかで、主人公の土屋は性格に難がある。意固地で嫉妬心を抑えきれない。その土屋がチャンスを与えられ、転換するのが本作のミソだ。
メガホンを取った森本晶一と佐藤快磨(ダブル監督)はこう語っている。
「この映画は、夢と折り合いをつけながら生きる人たちの物語です。そして、特別な夢を持たない人や、社会の中で壁にぶつかりながら日々を生きている人たちにも、寄り添える作品にしたいという思いを込めてつくりました」
漫画のアシスタントは一般の人とは無関係な世界だが、土屋という生き方に不器用なおっさんキャラは多かれ少なかれ、われわれに内在する屈折した心情だろう。だから彼の言動が気になってしまう。その果てにあるのは意外なラストだ。
「自分の生き方はこれでいいのか?」とふと疑問を抱いたとき、一旦立ち止まって本作を見て欲しい。シニカルな笑いがこみあげてきたら、それは人生に向けた許容力の高さを物語っている。胸に残るのは孤独なおじさんの悩み。久しぶりの“大人の映画”の誕生である。(配給=ギャガ)
(文=森田健司)



















