少子化の裏で加速するY染色体の退化 人類は絶滅危惧種?
ちなみにゴリラはチンパンジーの4倍も体が大きいのに睾丸は4分の1しかなく、体重比で見ると15分の1程度の大きさしかない。
■多様性消滅で地球環境の変化に対応できない
もうひとつ、Y染色体や精子の劣化の流れに拍車を掛けているのは生殖補助医療である。
「最近は絶対的不妊とされた無精子症の人の精巣から直接、成熟した精子になる前の未完の細胞を取り出し、顕微授精という方法で卵子に授精させることで、子供をつくれるようになりました。その一方で、こうした技術の進歩により、無精子症や乏精子症の原因となる遺伝子異常やY染色体の異常が次世代に伝わるようになったのです。その結果、ますますY染色体や精子は劣化していく。この流れはさらに加速するに違いありません」
やはり、Y染色体が消滅し、いずれ人類は絶滅するしかないのか?
「私はそうは思いません。ヒトとアカゲザルのY染色体を比較すると、両者のY染色体で2億年以上前に消滅したと考えられる400の遺伝子のうち、5つの遺伝子がヒトとアカゲザルで共通に残されていました。これらの遺伝子は、生殖機能を維持する上で必要な遺伝子として消失を免れ続けてきました。このようにヒトのY染色体上の遺伝子が激減したとしても、精子の生産に必要な遺伝子は残るはずです」