<6>自分は退院も、重症化一歩手前の母に後ろ髪を引かれる思い

公開日: 更新日:

 9時10分。看護師さんが迎えに来た。コロナ患者、コロナ疑い患者の交錯をうまく回避する。徹底的な非接触を目指す感染対策。またしてもコロナ医療最前線の医療スタッフにかかる負荷を垣間見た。

 私はおかげさまで生きて帰れた。病院には感謝しかない。治療で最もつらかったのは、入院直後の症状のピーク時だった。「一緒に退院しようね」と励まし合っていた母はまだ予断を許さない厳しい状況だ。コロナ病棟なので見舞いにも行けない。母は症状が改善せず、長期化し、気持ちで負けている。後ろ髪を引かれる思いだ。

 思えば、母はコロナを恐れて一切外出しなかった。私から家庭内感染したのは明らかだ。母への悔悟の思い。これで万が一、最悪の事態になったらどうしよう。一生の不覚である。精神的にはこれが一番つらかった。それなのに、自分が先に退院する。

 10日ぶりに自宅に帰った。看護師さんから母の紙おむつ、パジャマを届けて欲しいと言われた。帰宅後、すぐに母の荷物をまとめ、とんぼ返りで病院に向かった。看護師さんの負担を考え、病棟まで届けると言ったが、私はまだ健康観察期間である。感染症対策で、警備室の前で受け渡しをした。

「入院中はお世話になりました。母が引き続きお世話になります」

 地下駐車場までは階段で降りる。足腰がふらふらしている。相当、筋力が弱っている。(つづく)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず