著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

糖尿病の薬が心不全にも効くのか? 世界的医学誌で報告

公開日: 更新日:

 心不全とは、老化や不整脈、心筋梗塞などさまざまな理由で、心臓の働きが高度に低下した状態のことです。心不全の治療に特効薬はありませんが、最近、糖尿病に使用する薬の一部が心不全にも効果があるとして注目されています。それはSGLT2阻害剤というタイプの飲み薬です。

 この薬は尿中に出る糖の量を増やして、血糖値を低下させる働きのある薬です。尿の量が増えるので脱水になる危険がありますし、尿中に出る糖分が増えると、膀胱炎などの感染症にもかかりやすくなります。

 尿中に糖を出して一時的に血糖値を下げても、それで糖尿病が治るというわけではありませんから、発売の当初はその効果を疑問視する意見もありました。ところが、この薬を使用することで、糖尿病のコントロールが改善するばかりでなく、動脈硬化の病気が減り、寿命も延びることが報告されてから、一気に注目度が上がりました。

 中でも注目されたのが心不全に対する効果です。2015年の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に発表された論文によると、この薬を使うことで、心不全による入院のリスクが35%も低下していたのです。そうした結果を受けて、SGLT2阻害剤を心不全の治療薬として使おう、という動きが今では世界的に広がっています。糖尿病の優秀な治療薬は心不全の薬でもあったようです。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」