(44)家主がいなくなった実家は想像以上の速さで終末へと向かっていった

公開日: 更新日:

 この時、父が急死して半年あまり。初盆だった。だからといって何もする予定はない。納骨堂に行って手を合わせても、父は「墓なんてじめじめしてて嫌いだ」と言っていた人だったから、そこにいるとも仏になったとも思えなかった。

 空き家というものは、想像以上に速く終末へと向かう。空気の動かない家は、時間の流れまでも滞っているようだった。父母が暮らしていたときには感じなかった不穏な気配が、いまは家全体を包んでいる。かつてぬくもりのあった空間が、ゆっくりと朽ちてゆく。これが現実なのだと知った。

 東京に戻ると、当たり前のように日常の時間が流れている。それなのに「あ、あれを買わなきゃ」と思い浮かべる場所が実家の近所のイオンだったりする。生活の軸が、東京と熊本というふたつの場所のあいだで揺れて、私自身の心のありようもどんどんあやふやになっていった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    司忍、高山清司コンビによる「名門ヤクザ」コレクション

  2. 2

    小室眞子さん最新写真に「オーラがない」と驚き広がる…「皇族に見えない」と指摘するファンの残念

  3. 3

    小室圭さん家族3人ショットを「ニューヨーク・ポスト」が報道 1億円以上の新居から居住先、子供の性別まで赤裸々に…

  4. 4

    “幼稚さ”露呈した佐々木朗希「報奨金事件」…ド軍日本人スタッフ2名が「7000万円超」もらえず?

  5. 5

    小室圭さん&眞子さんの「第1子の性別」を特定 NYポスト紙報道の波紋と今後憂慮すべきこと

  1. 6

    エゴイストのような「人間性」がアウト? ドジャース佐々木朗希にトレード説がくすぶり続ける根拠

  2. 7

    松重豊がついに引退を示唆し2代目探しに言及…「孤独のグルメ」井之頭五郎を継ぐ有力候補者の実名続々!

  3. 8

    聖子&正輝の関係修復と健在ぶりに水を差す…沙也加さん元恋人による「踏み台発言」騒動の余波

  4. 9

    北村匠海「さばうちゅ」支えるヒロインの覚醒!出口夏希"弱点克服"でフジ月9救世主へ

  5. 10

    内閣支持率急落…高市“安倍イタコ”首相にチラつき始めた突然「ブン投げ退陣」の既視感