どこに消える? 大企業がため込む巨額「内部留保」の行方
予想通り、今年の春闘は、さっぱり振るわなかった。史上空前の利益をあげているトヨタでさえ、ベアは月額1500円と、昨年の4割以下。中小企業の春闘はこれからだが、主要企業のベアは、ほとんど昨年の半額程度に終わってしまった。
しかし、大手企業は、社員に大盤振る舞いできたはずだ。いくらでも“原資”があるからである。
なにしろ、大企業の内部留保の額はベラボーである。財務省の2015年10~12月の法人企業統計によると、企業の利益剰余金は355兆円。12年同期の274兆円から81兆円増と、アベノミクスの3年間で3割も増えている。なのに、労組側の要求額まで、昨年から激減している。
なぜ、巨額の内部留保は社員に還元されないのか。いったい、内部留保はどこに消えているのか。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「春闘がパッとしなかったのは、労使ともに“空前の利益”が一過性に過ぎないと見越しているからです。この3年の企業利益は、異次元緩和の円安政策頼み。売り上げ自体はさほど増えていません。法人減税など安倍政権の大企業優遇策によって利益を押し上げただけで、その利益は労働者の犠牲の上に成り立っている。そうした“刹那の経済政策”に、労使とも気づいているということです。設備投資が振るわないのも同じ理由です」