象牙製品がゴミになってしまう日
象牙は古くから武器や家具、文房具、楽器などに加工されてきた。耐久性が高く、コーティングされたような光沢の美しさなど重宝される理由はいくつもあった。江戸期の根付けや印籠などは装飾性も高く、身近なところではハンコの高級印材としても使われた。
もちろん象牙で作られた美術品も数多く存在しているので、美術業界もかつてはよく取り扱っていた。しかし現在は、うちの会社では取り扱いをやめた。その理由は手続きの煩わしさである。数年前から、象牙製品は1点ずつ専用の帳簿に載せ、誰からいつ買って、いつどこで誰に売ったかを環境省に報告を義務付けるようになった。本業と別の在庫表を作らないといけないのだ。また牙の形をした物は全て登録証を付けないと売買はできず、その手続きも煩わしい。
扱う業者は減り、市場力の高い中国での売買も煩わしさから難しくなり、取引相場も完全に暴落した。
もちろん象牙目当ての乱獲防止には賛同するが、すでに製品化されている物に関しては、もう少し違ったアプローチをしないと、象牙製品がただのゴミになってしまう日が来るのではないかと心配してしまう。