日本屈指の名湯 秋田「乳頭温泉郷」で7つの湯宿を巡る幸せ
冬の間は春が待ち遠しいくせに、いざ桜が咲き始めると冬の寒さが懐かしくなる。今回は、冬の名残を味わうべく、東北の温泉へGO!
場所は秋田の乳頭温泉郷(にゅうとうおんせんきょう)。温泉好きならピンとくるはず。東北、いや日本を代表する名湯が集う。岩手との県境にあり、女性の乳房に形が似ているからその名がついた乳頭山の麓に、黒湯温泉、孫六温泉(どちらも4月中ごろまで冬季休業)、蟹場(がにば)温泉、大釜(おおがま)温泉、妙乃湯(たえのゆ)、休暇村乳頭温泉郷、鶴の湯の合計7つの湯宿が点在する。
特に有名なのは、混浴の大露天風呂がよくテレビなどで紹介される「鶴の湯」。だが、他の宿もそれぞれ特徴がある。すべて泉質が違う点も面白い。いずれも日帰り入浴可能なので全湯制覇を目指すのも一興。一人ならそれが許される。
まずオススメは、もうすぐ冬季休業期間が明ける孫六温泉。県道194号から脇に入り、細い林道を川に沿って行くと突き当たりにある。古びた旅館のたたずまいが渋い。浴舎は宿舎から少し離れた川沿いに。中心の「石造りの湯」は混浴で洞窟の中にいるような雰囲気。そこにつながる2つの露天風呂は山を見渡せて開放感抜群だ。
個人的に好きなのは男女別の内風呂「唐子(からこ)の湯」。1畳ほどの小さな石の湯船の足元から、無色透明の温泉がこんこんと湧き出る。源泉温度は50度弱。熱めの湯に身を沈めると、クッと気持ちが引き締まる。そこに窓から春の日がパーッと差し込めば……、エモい!
7つの湯宿の中では一番施設が近代的で、その分秘湯感は薄いが、「休暇村乳頭温泉郷」の露天風呂からの景色に心打たれる人は多い。ブナ林に囲まれ、冬は雪の「白」、春夏は青葉の「緑」、秋は紅葉の「黄や赤」と、季節ごとに彩り豊かな景色が楽しめるからだ。混浴ではないので、男一人でも安心(混浴で一人だと変に勘ぐられて落ち着かない時がある)。
古い木造校舎のような建物が目印の大釜温泉も混浴ではない。こちらは緑がかった含鉄(がんてつ)泉で、金属(かなけ)臭と硬めの肌ざわりが特徴。例えればモルトウイスキーのようなクセに、男っぽい“当たり感”を感じることができるはず。
各温泉は無料シャトルバス「湯めぐり号」で巡れる。朝9時から約1時間半間隔で夕方まで運行。各宿日帰り入浴料金は1000円しないが、全湯回るなら、1冊1800円・宿泊客限定の「湯めぐり帖」が断然お得だ。 =おわり
(しばたゆう)
………〈データ〉………
「乳頭温泉郷」
(住)秋田県仙北市田沢湖(℡0187・46・2244)/乳頭温泉組合事務局・休暇村内