飼育放棄、虐待の前に…あなたがペットを飼えなくなったら

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 ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査(推計値)によると、昨年1年以内に新たに飼われた猫と犬は計約95万匹で、前年比約15%増えた。全体の3割超の人がペット飼育の初心者だが、安易な気持ちから飼育放棄や虐待に至るケースが増えている。

  ◇  ◇  ◇

GACKTの「愛犬を里子に出す」動画が炎上

 先日、GACKTが自身のユーチューブチャンネルにアップした動画「GACKTが愛犬を里子に出しました」で炎上した。“ペットロス”の知人夫婦に、自身が5カ月飼っていた愛犬をサプライズで贈るという内容だった。善意の行為とはいえ、GACKTは過去に飼っていた複数のペットが突然SNSに登場しなくなることもあったため、疑念と批判の声が上がったのだ。

 ペットを手放す行為はそれだけシビアな問題だが、コロナ禍で「さびしいから」という理由でペットを飼い始めたものの、世話をしきれずに捨ててしまう飼い主もいる。

 環境省の「犬・猫の引き取り及び負傷動物の収容状況」(2019年度)によると、飼い主から全国の自治体が引き取った犬は3300匹、猫が1万403匹。計1万3703匹に上る。中には飼い主が「世話が面倒」「お金がない」といった理由で、誰にも相談できずに山に捨てたり、飼育放棄するケースもある。そういった所有者不明の犬猫を含め、別に8万5897匹が引き取られているのだ。

 安易に飼っているのが分かるのが、「クロス・マーケティング」が全国の20~69歳を対象に行った「ペットに関する調査(20年)」だ。コロナ禍の昨年4月以降にペットを飼い始めたり、飼育を検討した人の中で飼い方・育て方を「調べたことはない」と回答した人は2割もいた。さびしさを埋めるためや、家時間が増えて“暇つぶし”に犬猫の飼育を考え、飼い始めたはいいが、糞尿の処理や鳴きわめいたりするペットに嫌気が差してモノのように捨ててしまう。飼育放棄は許される行為ではないが、どうしても飼えないなら、せめて新しい飼い主を探すのが義務だ。

19年度の「殺処分」は3万2743匹

 まず、各都道府県には、犬猫等の譲渡事業などを担う動物愛護相談センターがある。しかし、必ずしも引き取ってくれるわけではなく、基本的には相談に乗ってくれるだけ。東京都は〈どうしても飼いきれなくなり、新しい飼い主を見つけられない場合には、犬と猫の引き取りを行うこともありますが、事前相談が必要〉としている。新しい飼い主探しの助言やボランティア団体の紹介を受けることしかできないし、引き取ってもらったとしても、病気などをしていたり、すぐに譲渡先が見つからなければ処分対象となる(19年度の犬猫の殺処分数は3万2743匹)。

 そのため、ペットを譲渡するにはまずは身近な友人・知人、親戚などで引き取ってくれる人を探すこと。行きつけの動物病院に相談するのも有効かもしれない。大阪府の「京阪動物病院」のようにホームページ上で飼えなくなった犬・猫を引き受けてくれる動物愛護団体を紹介しているところもある。あらゆる手段を尽くし、身近な人にも頼れないなら動物愛護センターなどに相談。そして、信頼できるボランティア団体に預けたり、そこから里親募集を行う。〈表〉は主な引き取り団体の例だ。

 だが、あくまでもこれらは最終手段。一生面倒を見る覚悟がないならペットを飼う資格はない。現在飼育を検討しているなら、少なくとも最初に考えてほしいのは経済的な余裕があるかだ。

「アニコム損保の『家庭どうぶつ白書』(19年)によると、この10年で犬の寿命は+0.7歳、猫は+0.5歳延びました。これは人間に比べると飛躍的な延びになるそうです。高齢になるほど治療費もかかります。ペットには、保険制度はありませんから、全額自己負担。たとえば、犬に多い病気『弁膜症』の年間の治療費平均額は22万5810円、猫の場合は『慢性腎臓病』で27万2598円。これらに毎年予防接種や餌代など諸経費がかかりますから、費用が払えるかは大事です」(保険評論家でファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏)

 そして住環境。マンションなら犬猫「可」の物件なのか、一人暮らしなら出張や残業が多く家を空けることが多いか、家族が世話に協力的か、近くに動物病院があるかなどだ。もちろん、しつけには根気もいるので、飼育について学んだり、自分の時間に余裕があるかも考えなければならない。

 当然、ペットの飼育を放棄したら罰則もある。「動物愛護法」(動物の愛護及び管理に関する法律=19年に改正法)は、昨年6月から大幅な罰則強化がなされている。

「犬や猫などのペットを虐待したり、遺棄する事例が後を絶たないことから厳しい罰則が科されました。飼い主が飼育を放棄し、野良犬化させてしまうことは子供の情操教育にも悪影響を及ぼします。殺傷した場合、懲役は2年以下から5年以下に、罰金は200万円から500万円に拡大しています。また、ペットに餌や水を与えずに衰弱や虐待したり、捨てたり、不衛生な環境で多頭飼いした場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります」(山口宏弁護士)

 一時の感情で飼っていいことはない。

自分の病気や死亡後が心配ならどうする

 ペットの生活を確実に保障するためには、飼い主が元気なうちに譲渡先を決めておかなければならない。前出の長尾義弘氏が言う。

「ペットのために信託財産を残す方法があります。財産の一部を信託契約で身内など信頼できる人や団体に託し、飼うことができなくなったときにそこから飼育費を引いていく仕組みです」

 たとえば、ファミリーアニマル支援協会の「ペット信託」は委託者となる飼い主が信託財産として飼育費(犬200万円、猫150万円ほか入会金2万円など諸経費)を専用口座に入金し、受託者の友人や書士などと信託契約を結ぶことで、入院や死亡時に新たな飼い主に引き渡し、飼育費は信託から支払われる。

 親族に財産を残す条件として、ペットの世話を相続させることもできる。

「『負担付死因贈与契約』で、飼い主は、相続人に飼い主の死後にペットの世話をしてくれるなら、財産を相続させるという契約です。仮に相続人が、飼育を放棄したことが発覚すれば、改正動物愛護法によって厳罰に処されますから、効力は高いかもしれません」(山口宏弁護士)

■犬84万円、猫42万円で一生面倒見てくれる保護施設

 また日本アニマルトラストが運営する「ハッピーハウス」(大阪府)には問い合わせが相次いでいる。

「飼い主の方が病気や入院、老人ホームに入居したり、亡くなられたときに動物たちの一生を面倒見るサービス『アニマルセイブシステム』で、ペットの年齢も持病の有無も問わず、全国から受け入れています。費用は契約金2万円と1匹あたり犬84万円、猫42万円。これは一般的に飼育1年間にかかる費用ですが、その後、ペットが何年生きても医療費用など別途費用はかかりません」(担当者)

 契約は同社と委託者本人、家族や友人または書士など履行責任者の3者で行う。

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