中高年の再就職事情「受かる職務経歴書」を専門家が解説

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 コロナ禍が経済を揺さぶっている。東京商工リサーチによると、コロナ関連の倒産(負債1000万円以上)は、1027件に到達。銀行が融資を渋るケースもあり、持ちこたえている企業も他人事ではない。リストラのターゲットになりやすい中高年は要注意で、会社が倒れる前に再就職の準備を始めた方がいいかもしれない。

 ◇  ◇  ◇

 倒産件数を業種別にみると、2月19日時点で最多は飲食179件。アパレル95件、建設89件、ホテル・旅館67件と続く。2008年のリーマン・ショック時は上場企業の倒産が続出したが、今回は中小企業が中心。実質無利子・無担保融資など公的支援でしのいできた企業も、追加融資を渋られると、年度末にかけて倒産件数が増える恐れがあるという。

 最悪の事態を免れようと、早期退職を募った企業が2回目を募集するケースも珍しくない。2019年に1社だった2回募集は、20年に8社に増加。アパレル大手ワールドも、昨年8月の200人に続き、100人を追加募集すると発表した。

 ロイヤルHDは過去最大の赤字を記録し、双日などの支援を受けると発表。アシックスは2年ぶり、ぴあは11年ぶりに赤字に転落する見通しなど上場企業も厳しい。中高年は、企業規模にかかわらずリストラの波にさらされかねない。

 働き方改革総研代表の新田龍氏が言う。

「早期退職を募集する企業は比較的余力があり、割増退職金のほか再就職支援を用意するケースが多い。それで再就職のサポートを受けられても、大企業社員特有のエリート意識が抜けないと、書類審査さえ通らない人もいます。もちろん、支援する会社はそこをケアするのが仕事ですが、そんな意識では再就職活動がドロ沼化。モタモタしているうちに離職期間が延びると、飲食店のアルバイトやホテルの裏方、タクシー運転手などしかなくなることもあり、再就職格差にさらされますから悲惨です」

 中高年の再就職活動では、それまで培った人脈からヘッドハンティングされるように新天地が決まるのが一つ。これなら書類審査は事実上パス、相手先企業の知人を通じて役員面接を受ければ、ほぼ決まり。中高年であろうと、再就職に手間取ることはない。

「肩書で分かるでしょ」の上から目線

 そんな人脈に恵まれない人は、自分で探すか再就職支援会社のサポートを受けることになる。このルートだと、1回で内定をゲットできるのはまれ。これを肝に銘じていないと、職務経歴書に高飛車ぶりがロコツに表れるため、つまずきやすいという。

 新田氏がかかわったケースのうち、つまずいた人の書類を見せてもらうと、「これだけやった」ことの羅列で驚くほどあっさりしていた。紹介すると……。

●Aさん(51歳・飲食) 1995~2020年、㈱×○商事

【業務内容】 接客サービス全般 支店長業務全般

【実績】 2018年から△店の支店長として、店舗運営、予算管理などすべての業務を任されていました。

●Bさん(53歳・人事) 2000~2020年、㈱□×電気

【業務内容】人事部門一筋で人事全般

【PR】□×電気への転職前も一貫して人事部門を担いました。前職では人事部長として幅広い経験を保持しており、即戦力として対応可能。

 個人が特定されないように、固有名詞を伏せ、仕事の内容はボカしているが、2人とも東証1部のベテラン社員。「支店長」や「人事部長」の肩書が“印籠”とでも思っているのか、「肩書を見れば、分かるでしょ」と言わんばかりの上から目線の書き方だ。正直、目を疑った。

「再就職で失敗する中高年の職務経歴書は、ほぼ100%こういう書き方です。『名門企業に○年』『肩書と実績』を書き連ねても、採用する側からは誤差の範囲。PRになりません」

 では、厳しい書類選考を突破し、再就職の切符をつかむには、どう書くか。前述のダメな例を参考に改善策を新田氏に聞いた。

「たとえば、飲食店のAさんが書いた『支店長業務全般』には、具体的な『売上予算管理、社員およびアルバイトの業務・労務管理、シフト作成、販促イベント企画』といったタスクを添えると相手に伝わりやすい。支店長業務といっても、行われるタスクは業界によって違うので、採用する側に伝わるように書くのです。そうやって記入した『業務内容』を前提に、『実績』は組織への貢献度を数値化して書くことができればベターでしょう」

 新田氏の解説のように記入した人は、「チェーン店としてのオペレーションを着実に行いつつ、店舗独自で季節ごとにイベントを実施したり、旬の食材を用いたメニュー開発を積極的に行ったりして、リピート増加のための取り組みを継続。結果として、私が支店長に就いてから、前年度比で毎年25%以上の売り上げ増加を達成できました」と書いたそうだ。印象の違いは、一目瞭然。

 労務管理については、「メンバーとの1対1ミーティングを開始。問題点をヒアリングし解決することで、離職率は従前の平均30%台から9%台に低下。その後も10%未満をキープしました」とあれば、組織への貢献度も分かりやすい。

数値化しにくいタスクは貢献度を具体的に

 もう一人のBさんは人事が仕事だった。必ずしも成果を数値化できるわけではない。そこで改善策は――。

「別の方は、業務内容の項目を『採用業務、給与計算、労務改善、人事考課など』としたうえで、実績を次のように記しました。『中途採用や人事考課などの社内基準を整備したほか、福利厚生や労務関係についての業務プロセスを改善した結果、中途採用の採用目標人数を4年連続で達成。採用コストも10%削減』と、成果や数値でアピール。その一方、数値化できないところは、こうつけ足しました。『福利厚生の改善点については、イントラネットに定期的に情報を発信。社員が問い合わせする前に知りたい情報にアクセスしやすい環境を整備したところ、業務改善の部門で社内表彰を受けました』と。数値化しにくい点は、社内への貢献度を具体的に説明すればいいのです」

 なるほど、これまでの仕事や実績をすべて棚卸しした上で、組織への貢献度を具体的に書くのが書類審査に通る職務経歴書の書き方。「経験豊富」「即戦力」など抽象的な言葉はNGだ。

 昨年、東京で出版社を定年退職し、実家がある福島に戻って郊外学習施設のスタッフとして再就職した60代の男性もこう言う。

「再就職の内定を得るまで結局、半年ほどかかりました。最初は書類審査を通過しても、面接の手ごたえが皆無。4社目くらいから、職務経歴書に応募先での貢献度をアピールするように書き方を変えたら、面接が弾むように。実は内定を得る途中には、介護タクシーの仕事もいいかなと思い、第2種運転免許を取得していたんです。そのことにも触れたら、『そういう前向きさは、私どもの仕事には大切です』と好印象で内定をゲット。現役時代の仕事は、しょせん過去の栄光。中高年の再就職では、自分の性格や過去の実績を踏まえた上で、これからの貢献度をいかに具体的にアピールできるか。それが成否を分けると思います」

 男性は、失業保険の受給が切れる150日目のギリギリのタイミングでの内定だったという。肩書にこだわらず、内定獲得に向けて頑張るのみだろう。

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