加害者にも被害者にも…「学校での子どもの事故」親の対応

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 親は、子どものケンカに口をはさむな。ちょっとした口論なら、それでいいかもしれないが、大ごとになるとそうもいかない。子どもが中学生や高校生になり、コトとなりゆき次第では、大事故の被害者にも、加害者にもなりうるから心配だ。

  ◇  ◇  ◇

 愛知県の岡崎城西高校のチアリーディング部の元女子部員(18)が、部活中に下半身不随の大ケガを負ったのは、十分な安全対策がなされず危険性の高い練習をさせられたためとして、高校を運営する学校法人を相手取り、将来にわたる介護費など約1億8300万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。提訴は2月15日付。

 報道によると、事故が起きたのは2018年7月。元女子部員は1年生で、入部4カ月と未熟だった。低い高さでの宙返りも十分にできなかったのに、2人の先輩に両足を支えられて肩の高さに持ち上げられたところから、前方宙返りで飛び降りる練習をさせられたという。

 練習は体育館で行われ、元女子部員はマットに首から落下。その衝撃で脊髄を損傷し、下半身不随に。排泄も自分でできない重い後遺症に悩まされているそうだ。

 チア部の顧問は、練習に姿を見せることが少なく、多くは外部の女性コーチが指導。事故当時は2人とも不在だった。事故の原因となった技の練習では、通常なら必要とされるケガを避けるための補助スタッフもつけていなくて、マットを敷くのみだったという。

 スポーツに多少のケガや事故はつきもの。それを少しでもゼロに近づけるため、練習は少しずつレベルアップし、必要に応じて上級者やコーチが不慣れな者をサポートする。それが安全に体育会系の部活を行う上ではセオリーだが、この事故の状況からは、その安全意識がまったく見えてこない。

 顧問とコーチが不在では、元女子部員側が注意義務違反を指摘するのは当然。新入部員で未熟な元女子部員に習熟度の合わない練習をさせ、大ケガに至ったという主張も合理的だろう。

■死亡は10年間で1025件

 日本スポーツ振興センターは、部活や体育の授業、休憩時間、登下校などで起きた事故を熱中症などの病気も含めて集計。その2014~16年度分の322万件を産業技術総合研究所が分析している。

 それによると、1年間の平均件数は小学校と中学校で各37万件、高校で26万件。場所別では、校舎内が21万件だが、運動場や体育館、校庭、プールなど運動する校舎外が68万件に上る。中高では、運動部の部活が半数を超え、部員が多いバスケットボールサッカー野球バレーボールで事故が目立ち、重症例は柔道ラグビーなどボディーコンタクトが激しい種目に多いという。

 大事に至らないケースがほとんどだが、死亡事故も16年度までの10年間に1025件報告されている。それだけに岡崎の元チア部員のような後遺症に悩まされるリスクもゼロではないのだ。

■学校側の落ち度を判断する3要素

 自分の子どもが被害者になったら、親は顧問の教師や学校に法的責任を問えるのか。

 弁護士の山口宏氏が言う。

「部活動中の事故を判断する場合、顧問や学校の落ち度を判断するポイントは、①練習内容が危険性の高いものかどうか②日ごろから生徒に練習内容の危険性と安全対策を指導していたかどうか③生徒の判断能力はどうか、が争点になります。たとえば、顧問が不在がちだとしても、『オレがいないときはAの練習はやるな』といった指導がなされていて、その練習が事故の引き金を引いた場合は、顧問が安全義務を怠ったとは必ずしもいえないでしょう。今回のケースも、顧問の安全指導の在り方は、大きなポイントになりそうです」

 一般に高校生なら、ある程度判断能力があるだろう。しかし、顧問が禁じていたことでも、上級生が「やろう」と言ったりすると、なかなか「やめましょう」とは言いにくいだろう。

 上級生と被害者の関係において、どんな判断がなされたかが重要だという。

高めに見積もる逸失利益に司法判断は?

 では、賠償金についてはどうなのか。

「一般論として被害者は将来得られるはずの利益が事故によってどれくらい失われたかを算出し、損害賠償請求をします。いわゆる逸失利益です。すでに勤めている人ならともかく、高校生はどんな道を歩むかの想定が難しい。被害者側は概して理想形を前提に高めに設定しがちですが、裁判所はその妥当性を十分認定するとは限らず、平均的な金額に落ち着きやすい傾向があります」

 今回のケースで賠償金の算定は、「将来にわたる介護費」が中心になっている。逸失利益よりも関連性の強さを立証しやすくする狙いとみられるという。

 こうしてみると、親はつらい法定闘争を余儀なくされることになる。子どもの健康を台無しにされた揚げ句の苦難だけに泣きっ面にハチだ。

 前述の死亡事故については、1025件のうち最多の448件は登下校中に発生。交通事故が大半で、小学生は徒歩、中高生は自転車が目立つ。

 このデータは子どもが被害者だが、自転車通学を巡っては、子どもが加害者になることも珍しくない。

 自転車事故は、全国的に減少傾向ながら、東京は増加傾向だ。東京の交通事故に占める自転車が絡む割合は4年連続で上昇。昨年は4割を超えている。全国の約2割の倍だ。年齢別にみると、未成年が2割近い。

 地方は、車の免許を取得できる年齢になると、車が生活の足になる。そのため自転車事故は未成年が目立ち、全国での割合は3割だ。自転車事故の全体的な件数は減っていても、こと未成年に限ると、要注意な状況は変わっていない。

自転車とバイクの衝突で…

 そこで、未成年の自転車事故をまとめたのが、〈表〉だ。1つ目の事故は11歳の小学生が起こしたものながら、被害者の女性が重い障害を負ったことから、神戸地裁は1億円近い損害賠償を認めている。

「自転車事故の損害賠償は、厳罰化の流れになっています。万が一、被害者に訴えられると、子どもが幼いほど親の監督義務を問われることになるのです」

 11歳の小学生の親は、法廷で子どもに安全運転を十分指導していたと訴えたが、認められず、親の監督責任を問われることになった。〈表〉の3つ目は自転車とバイクの事故ながら、自転車の高校生が赤信号を走行していた信号無視や安全運転義務違反などを重ねた上、相手の男性が死亡したことで重い賠償額になった。

「親の監督責任が認められて賠償金を支払えないと、破産するしかなくなります。被害者も救済されません。関東や関西など多くの自治体では、自転車保険の加入が義務付けられていますから、自転車を使う家庭は家族まとめて加入すること。保険加入が義務化されていない自治体の方も、加入するのが無難です」

 日本も欧米のように訴訟社会になりつつあるとはいえ、どうせならそんな事態に巻き込まれずに暮らしたい。子どもの安全指導は、念には念を入れてやっておこう。

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