インド株に日本なす術なし…感染スピードは英国株の3倍

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 ロックダウンの一部緩和を進める英国で、新型コロナウイルスのインド株への危機感が強まっている。日本は水際対策に失敗し、ワクチン接種はいまだに低空飛行中だ。インド株という新たな脅威を前に、手を打つのが遅すぎる。

  ◇  ◇  ◇

 英国は今や、コロナ封じ込めの「優等生」になりつつある。全成人の40%以上が2回目のワクチン接種を終え、23日までの直近1週間の新規感染者数は1日当たり平均2018人、死者数は6人。感染者数が最大1日6万人、死者数同1800人から一気に抑え込んだ。その英国が、いま直面しているのが、世界40カ国以上に広がったインド株の感染力だ。

 英国保健省公衆衛生庁(PHE)が発表した「英国内で懸念される変異株と調査中の変異株」と題された報告書(22日公表)によると、2月1日から5月18日までの国内の検体データを調べたところ、5月10日にインド株が約50%を占めた。3月末時点では、ほぼ0%だったから、約1カ月でウイルス株の半分がインド株に置き換わったことになる。

 どれほど驚くべき速さか、英国株の広がり方と比べるとよく分かる。英国株は約半年で国内の感染事例の98%に達した。単純に考えれば、約3カ月で50%である。インド株は1カ月で50%だから、英国株よりも3倍速いスピードで取って代わっているのだ。

感染爆発にワクチン接種追いつかず

 実際、インド株の感染力はズバぬけて強い。英国株は従来株の1.3倍といわれるが、インド株は、その英国株の1.5倍との指摘もある。

 インド国内の死者が右肩上がりになり始めた4月1日から、隣接国のバングラデシュとネパールでも死者が急増。24日までに1.35倍(バングラデシュ)、2.09倍(ネパール)も増えた。アジアでも死者が続出しているのだ。

 すでにインド株の流入を許してしまった日本も、後を追いかねない。英国はインド株の流行前にワクチン接種が進んだが、日本はワクチン接種が感染爆発に追い付かない恐れがあるからだ。

 24日から高齢者向けの大規模接種が始まったものの、政府の完了見込みは7月末。一般市民が打ち終えるまで、「来年3月までかかる」(政府関係者)との見方も出ている。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、日本の接種率は世界平均9.54%を大きく下回る4.37%(20日時点)で、OECD加盟37カ国中ワーストだ。

 ワクチンを2回打てば、インド株に対しても、かなり効果があるという。しかし、日本は、インド株に対していわば丸腰なのだ。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏がこう言う。

「アジアは欧州に比べて感染率が低かったにもかかわらず、インド株の登場により、インドは欧州並みの感染率になりました。アジア諸国の感染者数が少ない要因とされてきた『ファクターX』が、インド株に敗れた可能性があります。英国がインド株に置き換わりつつあることを踏まえると、ワクチン接種の遅い日本でも大流行する恐れがあります。人口の4~5割が接種していれば、感染爆発を防げるでしょうが、今の接種ペースではインド株の感染力に追い付きません」

 ウイルスは、ワクチンを打ち終えるまで待ってはくれない。インド株が猛威を振るう“時間切れ”は、すぐやって来る。

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