鎌田實さん 血のつながらない両親の思いが詰まったコロッケ弁当

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「この4、5年、日本人に決定的に欠けているのはタンパク質です。そのために寝たきりの原因となるフレイル(虚弱)が北米人に比べて日本人は多いんです。40歳以降は体から毎年1~1.5%筋肉が減るといわれています。“貯筋”するために1日に必要なタンパク質の量は体重×1.2グラム。僕は70キロですから1日84グラムが必要という計算になります。でも、今の日本人は必要量を取れていない人が多いんです」

 ◇ ◇ ◇

 各種メディアで活躍する鎌田實先生が上梓した著書「鎌田式 健康手抜きごはん」が話題になっている。手軽な材料でだれでも簡単に作れて栄養豊富なメニューをわかりやすく解説している。コロナの影響で外出が減って健康への不安を抱える人、簡単で目先が変わったうまい食べ物はないかと悩んでいる人、女房にちょっと楽させるために自分でごはんを作ってみようかと考えている中高年にはバイブルのようなレシピ本だ。

「健康手抜きごはんはタンパク質と野菜たっぷりにこだわり、手軽な缶詰や瓶詰をうまく使っています。例えば肉豆腐は牛肉の大和煮缶詰と高野豆腐、カットされたしめじ、ごぼう、長ねぎを使ってレンジで2分、3分蒸らしてできてしまいます。タンパク質という点ではこの一品で40.5グラムありますから、1日の必要量の半分は摂取できる計算です」

 さて、そんな鎌田先生のおふくろメシは両親の思いが詰まった意外な一品だ。進学校の都立西高から東京医科歯科大を卒業して医師になり、さまざまな形で社会貢献してきた鎌田先生の生い立ちは複雑だった。父・岩次郎さん、母・ふみさんはいわゆる育ての親だった。

「僕は本当の両親を知らないんです。これは推測ですが、僕を生んでくれた夫婦は離婚し、僕は父方に預けられ、1歳8カ月ほどで岩次郎・ふみの元に引き取られ、育てられました。父はバスの運転手、母がバスの中で切符を切る車掌だから職場結婚ですね。ところが、母は僧帽弁狭窄症という重い心臓の病気を患っていましてね、長い入院生活を送りました。そんな貧しい生活の中で、病弱の妻を抱えながら父はよく僕を育てる決断をしてくれたと思います。調べても親戚とか血のつながりがないから、どうしても子供が欲しかったのかな。今でも本当のことはわかりません。行き場を失った僕に出会って、親になってくれたことには感謝しかありません」

重い心臓病を患い入院が続き退院した時に作ってくれた

 両親の姿を見て医師を目指し、養子であることはパスポートを取得する40歳すぎまで気がつかなかったそうだ。

「父は他人にも僕にも非常に厳しい人で、母の入院費を稼がなきゃならないから、とにかく働き者でした。父には一度も褒められたことはなかったですね。母は人の悪口を決して言わない優しい人でした。母と電車やバスに乗って出かけると隣に座っている人とすぐ仲良くなり、別れ際にみかんを半分にして『後で食べて』と言ってあげるんです。1個あげればいいのにと思っていると、残りの半分は僕にくれるんです。僕とは血はつながっていないけど、だれとでも仲良くなれる性格は母のキャラクターをもらったのかな。30代で病院長になれたのは、父の厳格な一面と母の優しい面の両方を受け継いだおかげだと思っています」

 思い出のごはんはふみさんが退院してきた時に作ってくれたお弁当。

「入院生活から帰ってきた母は料理する気力も体力もない。それに貧しくて料理の経験も豊かではなかった。でも、頑張ってお弁当を作ってくれましてね。夕飯に肉屋さんでコロッケを買ってきて翌朝、残ったコロッケを醤油と砂糖で甘辛く煮て、ごはんの上にのせてお弁当にしてくれました。中学生の頃は日本は少しずつ豊かになってきて、友だちの弁当には卵焼きにウインナー、野菜が入ってカラフルだった。僕のお弁当は味の染みたコロッケがのっているだけでしたが、これが言葉に言い表せないほどうまかった。病弱な母が息子に持たせてくれた精いっぱいのお弁当は僕にとっては忘れられないごはんです。今でも僕はどんぶりごはんが大好きです。それはあのコロッケ弁当の影響かもしれませんね。このコロッケ弁当も手抜きごはんですけどね(笑い)」

今のオススメは粉豆腐で作るお好み焼き

 最後に。現在、鎌田先生イチオシの食材は高野豆腐だ。高野豆腐はタンパク質の塊で、悪玉コレステロールや血糖値を下げる作用がある。

「スーパーなどで高野豆腐を粉にした粉豆腐を売っています。これで作るお好み焼きが僕の得意技です(笑い)。カキ(冷凍したものでもOK)やホタテを小さく切り、キャベツと豚バラを少し入れ、小麦粉は一切使わずに、水で溶いた粉豆腐を具と混ぜ合わせ、フライパンで焼くだけ。熱々の上に青のりやマヨネーズをかけてできあがり。タンパク質いっぱいのお好み焼きはすっごくおいしいですよ」

 これもまた鎌田式手抜きごはん!? ぜひお試しください。

▽鎌田實(かまた・みのる)1948年、東京都生まれ。都立西高、東京医科歯科大学医学部卒、諏訪中央病院へ赴任、30代で院長。地域包括ケアの先駆けをつくり、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。現在、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ原発事故後の91年からベラルーシの放射能汚染地帯へ医師団を派遣、医薬品を支援。2004年からはイラクの4つの小児病院へ医療支援を続けている。全国の被災地も支援。著書多数。

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