著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

コロナ禍で高額治療に誘導する悪徳歯科が増殖中…「歯の駆け込み寺」の医師が注意喚起

公開日: 更新日:

「あまりに厳しい」と悲鳴を上げるのは、都内で開業する50代の歯科医師。コロナ禍により、厚生労働省が不要不急の治療を控えるように通達したことで、歯科診療所に来院する患者数は激減した。

「正直なところ、2020年度はそれほど苦しくはなかった。さまざまな形で補助金が出ましたからね。21年度は少しは患者さんが戻ってきたものの、きつさはより増している。補助金は出ているのですが、額が大幅に減らされてしまった。そんな中で、感染力の強いオミクロン株の登場。このクリニックを始めて20年になりますが、続けられるかどうか、開業以来の危機におちいっています」

 とはいえ、廃業に踏み切る診療所がそれほど増えているわけではない。帝国データバンクの調査報告によると、20年の歯科診療所の倒産件数は11件、21年は10件。例年とほとんど変わらなかった。また、厚労省の医療施設動態調査によると、まだコロナの影響が出ていない20年1月末の歯科診療所総数は6万8327院。21年10月末は6万8028院で、わずか0.4%の減少にすぎない。歯科診療所の数を評する際によく使われる「コンビニより多い」という状態は現在も継続中。なお、コンビニ総数は5万5950軒(21年12月、日本フランチャイズチェーン協会調べ)となっている。

1週間に2~3人の患者しか来ない歯科医院も

「厚労省の発表する歯科診療所数は必ずしも、実態を反映していないのではないか。私の知り合いの歯科医院も閉院の届け出まではしていないまでも、1週間の患者数が2~3人しかいないところがある。二極化が進んでいるんです。もっとも、うまくいっているところも、以前よりはだいぶ患者数が減っているのが現実です」(同)

 歯科業界全体が停滞する状況下で、「患者が少なくなっているぶんを取り返そうと、高額の治療に誘導する歯科医師が増えている」と指摘するのは、東京・渋谷で開業する歯科医師の斎藤正人氏だ。「極力、歯を抜かない治療」を標榜。セカンドオピニオンにも積極的に取り組み、斎藤氏の歯科医院は別名「歯の駆け込み寺」とも呼ばれている。

「必要もないのに、インプラントを勧める歯科医師が少なくない。特にコロナ禍になって、その傾向が強まっているんです」

 斎藤氏はインプラントを全面否定しているわけではないが、まだ十分に使える歯を抜いてまで行う治療ではないと考えている。にもかかわらず、安易にインプラントをやりたがるのは、歯科医師にとって「手っ取り早く稼げる方法」だからだ。保険外治療のインプラントの相場は1本35万~40万円。もっと高いケースもある。何本も治療しているうちに、高級車が購入できる費用がかかることもめずらしくない。

「インプラントだけではありません。虫歯や歯周病治療などでも、保険で対応できる段階なのに、高額の素材を勧めて保険外治療に誘導していく。数回の治療で済むのに、半年以上も通院させる。1人当たりの治療費をいかに上げるかに腐心しているんです。コロナのせいで"貧すれば鈍する"といった様相があちこちの歯科医院で起こっているのは嘆かわしい限り」

 窮状はわかるが、患者を食い物にして乗り切ろうとするような考え方では、歯科業界の未来は暗い。

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