「自分だけのために使う時間」を増やすコツ
60歳を過ぎたら、「待ってました!」の黄金生活がやってきた。若い頃のようにあくせく働くこともないし、自分のために使える時間はたっぷりある。楽しく豊かに、そして元気にこれからの人生を送りたい。煩わしさから逃れるため、これまでの常識を疑ってみることもひとつだ。
国士舘大学講師の安重千代子氏(ビジネスマナー、医療サービス学)がこう言う。
「こういうと不謹慎と取られるかもしれませんが、ありがたいことに“コロナ”がありました。顔見せの親睦だけが目的のような『同窓会』、交流の薄い親族が集まる『法事』などは、お断りできるよい口実になります。孫の『子守』も負担であれば断っていい。ベビーシッターや一時預かり施設の費用を一部援助するなどの代替案を提案すれば、角も立ちにくくなるでしょう」
もちろん、旧友との再会が楽しみな人は同窓会やクラス会、会社のOB・OG会に参加すればいいが、そうでなければ何も無理をして参加することはないだろう。
「『~しなければいけない』『~が常識だ』は苦痛になってまでするものではありません。気を使うばかりで楽しめない懇親会は、これまで『体調がすぐれない』などと言って断っていた人も多いでしょうが、今は『もう少し様子を見ませんか』で相手に伝わります」(安重千代子氏)
固定電話は必要か?
断捨離の風潮に踊らされてテレビまで捨てることはないが、スマートフォンがあるなら、「固定電話」は本当に必要だろうか?
パナソニックの調査によると、家に「固定電話がある」と回答したのは全世代平均で78%。世代が高くなるほど保有率は高く、70代は94%にまで跳ね上がる。しかし、30代は半分しか固定電話を持っていない。それで日常生活に支障が出ることはほぼないし、契約書類も携帯電話の番号さえあれば事足りる。しかも、「信用のため」などという理由で、固定電話の契約を継続していると、基本料金だけでも月1500円ほどかかる。
「むしろ、振り込め詐欺を防ぐ効果もあります。だいたい自宅の固定電話に電話をかけてくる人は、今や勧誘やアンケートばかりです」(安重千代子氏)
愛知県内の特殊詐欺被害のうち、犯人からのアプローチとして最も多かったのが78%の固定電話だ(2019年)。
今さら禁煙したり、酒を控えたりして何になるのか。なにごとも度を越してはいけないが、毎日が減塩食やヘルシーフードばかりでは味気ない。
健康を考えながら料理を作ってくれた人には最大限感謝しつつ、こっそり隠れて醤油を足せばいい。
「コロナ禍で私も母を見送りましたが、『あの時になぜ好きなものを食べさせてやらなかったのか……』と後悔のようなものはあります」(安重千代子氏)
60歳になった途端、スーパーは5%割引
そして年を重ねるのも結構悪くない。
60歳になった途端、「イトーヨーカドー」は毎月15日&25日がほぼ全商品5%引き。「すかいらーくグループ」のガストやバーミヤン、ジョナサンなども5%引きで食べられる。
また、男性65歳、女性60歳でJRの「ジパング倶楽部」に入会すると、全国のJR長距離切符の運賃が3回目まで2割引き、4回目以降20回目は3割引きになる。個人会員3840円、夫婦会員6410円の年会費を払ってもお得感はある。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」も大人1日券8400円~(税込み)が、65歳以上で7600円~(同)と1割ほど安くなる。
■70歳からバスの運賃は年1000円で乗り放題
さらに東京都民が70歳になると、「東京都シルバーパス」で都電、都バス、日暮里・舎人ライナー、民間バス、都営地下鉄線が乗り放題。費用は本人が住民税非課税なら年額1000円(課税の人は2万510円)。同様に横浜市民だと、「敬老パス/敬老特別乗車証」で非課税世帯なら年額3200円で横浜市営地下鉄、金沢シーサイドライン、市内民間バスが乗り放題となる。大阪市民も大阪メトロと大阪シティバスが1回50円だ。
運転免許そのものが不要な時代に?
一方、70歳以上のデメリットに運転免許証更新の際の「高齢者講習」がある。受講しないと更新できないし、講習時間は2時間、さらに講習手数料で6450円もぼったくられる。また75歳になると、これに「認知機能検査」まで加わる。約30分のテストで1050円だ。とはいえ、10年後は自動運転が主流になり、免許自体が不要になっているかもしれない。
今年10月1日から75歳以上の医療費の窓口負担は、おおむね1割だったものが、一定以上の所得があると2割にアップする。現役並みの所得者はこれまで通り3割負担。所得の目安としては、「年金収入+その他」の合計が200万円未満ならそのまま1割でOK。200万円以上(世帯内に75歳以上2人なら320万円以上)になると、2割負担となる。
さらに383万円以上(同じく75歳以上2人なら520万円以上)で現役と同じ3割だ。さすがに批判が多かったため、厚労省は10月1日施行後の3年間(2025年9月30日まで)は、2割負担の者のみ1カ月の窓口負担の引き上げ増加額を3000円までに抑える。
ただし、入院医療費は対象外で、さらに言うと窓口で安くなるのではなく、一度2割で支払ったものが後で払い戻しで返ってくる方式のため、事前に「高額療養費」の口座を登録しておかないといけない。約2割の人が1割から2割負担にアップするので気を付けたい。