社食や社宅…年々減少する「法定外福利費」問題 社員への投資コストはムダ?

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最新の高性能パソコンは若手社員優先に支給

 社宅に限らず、JBSは、「若手ファースト」をコンセプトに掲げています。例えば、最新の高性能パソコンは若い社員から優先的に支給されます。かつて行われていた社員旅行でも、若手社員ほど眺望の良い部屋があてがわれたそうです。なんとも羨ましい話です。

 その理由について牧田氏は、「若い人ほど吸収力が高い。だから最新の高性能なパソコン をどんどん使って、どんどん仕事を覚えて欲しい。眺望の良い部屋は、若いうちにたくさん感動させてあげたかったからです。感動は必ず仕事に良い影響を与えますから」と答えています。

■法定外福利費は年々減少傾向に

 「人的資本経営」には不可欠な福利厚生。一般的に、企業はどれくらいの福利厚生費をかけているのでしょうか。2020年 12月に日本経済団体連合会が発表した「第 64回福利厚生費調査結果報告」によると、2019年度の従業員一人当たりの福利厚生費の総額は平均で1カ月 10万8517円。そのうち法定福利費は同8万4392円、法定外福利費は同2万4125円でした。

 福利厚生費には、法定で定められた「法定福利費」と企業が自由に定められる「法定外福利費」の2つがあります。法定福利費は社会保険など法律で定められているもの、法定外福利費は通勤費や住宅手当、健康診断費や慶弔費、各種レクリエーションなど です。社員食堂や社宅は後者に当たります。推移を見ると、法定福利費は2003年度に7万円台を超え、 13年度には8万円台を超えるなど、一貫して上昇傾向にあります。しかし、法定外福利費は抑制傾向にあります。つまり、社員に対する衣食住のサポートは年々手薄になっているのです。 福利厚生をどれくらい手厚くするべきかは意見が分かれるところでしょう。社員のエンゲージメントやウェルビーイングといったことが取り沙汰される昨今、無視するわけにはいきません。しかし先立つものがないというのが経営者の本音でしょう。しっかりと業績に跳ね返ってくると分かれば決断もしやすいでしょうが、それを裏付けるデータは今のところ見当たりません。

 牧田氏は反論します。「正直なところ、費用対効果が計算できるならやろうという発想自体が問題ではないでしょうか。本当の費用対効果は何年も先に出るものですし、社員への投資には、コストで 計算できない価値が私はあると思います」
社員への投資はコストではない――。

 いま、「人的資本経営」という言葉がビジネスの現場ではホットワードになっています。人材を「資本」=財産と捉え、その価値を最大限に引き出すことが中長期的には企業価値向上につながるという考え方です。会社選びの基準も変わってきています。

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