著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(25)山菜を喰いに甲府まで

公開日: 更新日:

 先日、ふらりと出かけたら、夕方5時の開店少し前に着いたけれど、もう満席だった。なんとか席を確保して、まずはビール。お通しのレンコンの煮物がうまい。これから5月にかけては、この店に来たら山菜である。フキ、ワラビ、タラの芽、行者ニンニク、コシアブラ、いろいろある。

「フキ味噌、食べる?」

 女将さんが訊いてくれるのに、即座に首を縦に振る。洗って湯通ししたフキを刻んで味噌、砂糖、酢を混ぜたもので合え、豆腐にのせてくれる。ひと箸、口へ入れると青い匂いとほのかな苦みが口に広がる。これ、これ。

「春の味じゃんね」

 女将さん、にっこり笑う。

 さて、酒をもらおう。高清水を燗で。昼間、春の雨が降り、多摩の自宅を出るときも少し肌寒かったが、夜の甲府はさらに気温が低い。熱くなっちゃったと出してくれた熱燗が腹にしみて気持ちがいい。

 右は、常連さんが二人。左は仕事のお仲間風の3人様。奥のほうは、よくわからない。店はカウンター1本。トイレも路地の共同だが、この店には客が絶えない。私は、一人で行って、飲んで、帰るだけだから、上り最終の「あずさ」まで、ゆっくり飲む。

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