著者のコラム一覧
本郷和人歴史学者

東大卒。藤田医科大学特命教授・同大学リベラルアーツセンター長、元東京大学史料編纂所教授。近著に「インテリジェンス関ヶ原」(文芸新書)。

上杉謙信(1)「義を重んじる武将」は本当だったのか

公開日: 更新日:

 ところがそのころ、関東では北条氏が勢力を拡大し、関東管領・上杉憲政は越後へ逃れてきました。一方、信濃では武田晴信(信玄)が北信濃へ進出し、村上義清や小笠原長時らも景虎に救援を求めます。

 ここで景虎は、武田と北条という二大勢力を同時に相手にする道を選びました。本来なら二正面作戦は避けるべきです。では、なぜ武田と戦ったのでしょうか。

 その理由は地理にあります。景虎の本拠・春日山城は北信濃に近く、善光寺平を武田に完全に支配されれば、越後は直接脅かされます。しかも春日山城は、日本海交易の拠点である直江津を守るための城でもありました。越後は青苧などを直江津から各地へ送り、大きな利益を得ていました。武田が海への出口を求めれば、最終目標は直江津になる可能性が高い。したがって、北信濃で武田を食い止めることは、越後を守るために不可欠だったのです。

 では、関東への遠征はどう考えればよいのでしょうか。その理由こそが、私は謙信を理解する最大の鍵だと思っています。

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