(54)コロナの頃 ~その2~ 蕎麦屋酒
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建物の中ではなく、庭の席に座り、酒にした。選んだのは「菊水 辛口」。つまみはだし巻き玉子だ。庭席は換気を気にする必要がないから、のんびりと飲める。それだけのことが妙に嬉しかったことを、今更ながら思い起こす。あの頃から、事態はさらに悪くなっていき、マスク、消毒、衝立越しの会話が求められるようになるのだが、この頃は、人の心が委縮しきってしまうまでにはなっていなかった。2020年の6月は、そんな時期だった。
晴れていた空が曇った。やがて雨が降ると予報が出ていた。少し急いで、鴨南蛮と「澤乃井」の燗で締めにかかる。
熱々の鴨とネギを口へ運び、汁をすすり、酒を飲む。ああ、こんな時間があるなら、贅沢は言うまい。いつもよりじっくり味わうように、鴨南蛮と燗酒を楽しんだ。
寺の門前からバスで私鉄の駅まで帰るつもりだったが、気持ちは満ち足りていて、30分ほど歩こうと思った。
野川を渡り、布田天神の脇を抜けて調布駅まで。マスクを煩わしく感じながら、それでもゆったりと歩いた。

















