故宮で贋作販売? 騙された日本人旅行者が生々しく証言
【読み切りドキュメント】美術商の事件簿(下)
▽前号のあらすじ 中国・北京の「故宮博物院」で、日本人観光客が購入した陶器と鑑定書が次々と私の骨董店に持ち込まれた。しかし、すべて贋作だ。これは国家的詐欺事件なのか。話を聞いた知り合いのテレビ局ディレクターの小俣が興味津々、取材に動き始めた。
息を切らしてテレビ局の小俣がやって来た。スーツ姿の大男とカメラマンも一緒だ。小俣が「ベイやん」と呼んでいた男は「二瓶」と名乗り、同じ報道局のディレクターだった。
骨董品が並ぶ店内には別の客もいた。私は、待たせていた男性客と小俣たちを、店に隣接する事務所へ連れて行った。ここの応接間なら静かで撮影にもうってつけだ。
挨拶がすんで、二瓶と小俣が、恰幅のいい経営者風の男に矢継ぎ早に質問を浴びせている。おおよそはすでに知っていることなので、私は席をはずし、店に戻った。
偶然は重なるものだ。夕方になって、また“故宮客”が店に現れた。9人目。学者風の男性だった。やはり故宮で購入したという景徳鎮の香炉を持参し、鑑定を頼んできた。