北京「故宮」で贋作陶器を販売?日本人観光客が次々被害に
【読み切りドキュメント】美術商の事件簿(上)
「面白い! それ、絶対ウケますよ。うちの番組でやりましょう!」
私の話に、小俣は想像以上のリアクションで食いついてきた。大手テレビ局のディレクターの肩書をもつが、見た目は渋谷あたりの遊び人風だ。
「ちょっと、待ってください」と、興奮した声でソファから立ち上がった小俣は、私のオフィスの隅に行き、携帯電話をかけ始めた。
「あ、ベイやん? おれおれ」と言いながら、私から聞いた話を電話の相手に繰り返し始めた。
「そうそう、コキュウ、中国の国立美術館……、いや、博物館か。ま、世界に誇る博物館だよ。そこが、贋作を売っているんだって。で、日本人がいっぱいだまされている……、ね、すごいだろう、これ絶対に話題になるよ。……うん、……うん、オーケー。じゃあ、頼んだよ」
携帯を切った小俣は再び私の前のソファに腰を下ろすと、冷めてしまった湯飲みのお茶を一気に流し込んだ。
「染谷さん、それでね、いろいろとブツが欲しいんですよ」