戦時中に軍需産業へ転ばなかったミキモトの真珠翁
歌人の馬場あき子に「マスクしてコロナウイルスに抗へば不要不急のものらかがやく」という歌がある。真珠など「不要不急のもの」だろう。しかし、「非常時」と抑圧された戦争中に「ゼイタクは敵だ」と非難された時に「ゼイタクは"素"敵だ」と打ち返した者がいた。
私はゼイタクを好む者ではないが、それが排斥される時代は決していい時代ではない。
『真珠新聞』に頼まれて、杉田勝時というミキモトの社長にインタビューしたことがある。杉田は東京商大(現一橋大)で城山三郎と同期生だった。本名が杉浦英一の城山とは出席番号も1番違いだったそうだが、真珠のことなど何も知らない私は、あわてて、その時、ドロナワ式に源氏鶏太の御木本幸吉伝『真珠誕生』(講談社)を読んだ。
その効果があったかどうかはともかく、やはり「真珠翁」はなかなかおもしろい人物だったようである。