ウクライナ兵「捕虜銃撃動画」はホンモノなのか? 米CNN報道に世界が騒然
ロシア発の偽情報なのか、それとも戦争が生み出す狂気の一端なのか──。ウクライナ兵がロシア兵の捕虜を銃撃したとする米CNNの報道に世界が騒然としている。事実だとしたら、捕虜の人道的な取り扱いを定めたジュネーブ条約に違反する上、プーチン大統領に猛襲の口実を与えかねない。
CNNは、ウクライナ北東部ハリコフ州でウクライナ兵らが捕虜のロシア兵らをひざまずかせ、銃撃した場面とされる投稿動画をインターネット上で入手。6分弱の動画には、ウクライナ兵らがロシア国境から約30キロのオルホフカ村で活動していたロシア軍の偵察班を捕らえたと話す声が入っているという。
この動画にはウクライナのゼレンスキー大統領も困惑している可能性がある。CNNの取材に対し、ウクライナ大統領府顧問は「政府は非常に深刻に受け止めている。直ちに調査する」と回答。国防省は軍司令官が声明で応じ、ロシア軍がウクライナ軍への不信感をあおるため動画を偽造しているなどと主張。顧問も司令官もジュネーブ条約や国際人道法などを順守していると強調したという。
ロシア側も調査着手に前のめり
CNNが報じた動画とは別に、ネット上には後ろ手に縛られたロシア兵らがウクライナ兵に脚を撃たれる動画や、負傷したロシア兵がすし詰め状態で折り重なって放置されている画像なども出回っている。真偽は不明だが、これが戦争の現実なのか。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう言う。
「ウクライナ側は調査すると表明しています。結論も含めて事態を注視する必要はありますが、戦場の最前線では双方とも生きるか死ぬかの戦いをしているわけで、平常心を失い、狂気が芽生えてもおかしくありません。ましてや、突然ロシア軍に侵攻されたウクライナ側には家族を失った兵士もいるでしょう。ロシア軍による無差別攻撃が激化し、国内外への避難民が人口の4分の1にあたる1000万人に上った事実を鑑みれば、ウクライナ寄りの国際世論が反転するには至らないのではないか」
銃撃動画について、ロシア側も調査着手に前のめりだという。プロパガンダがお家芸のロシアを上回る情報戦を展開し、国際社会を引き付けてきたウクライナだが、どうなるか。