日本は自覚なきスピリチュアル先進国 そのマーケットは1兆円規模
統計数理研究所による「日本人の国民性調査」では、「信仰や信仰心を持っているか」という質問に、持っていると回答した人はわずか約3割。これに対し、「宗教的な心は大切か」という問いには、約6割が「大切」と回答している。信仰はもたないが、心は大切と感じているわけだ。このような感覚はいわゆるスピリチュアリティー(一般的な訳語は「霊性」「精神性」)と呼ばれているものであり、日本のスピリチュアルマーケットは1兆円規模と指摘する研究者もいる。
たとえばパワーストーン、ヒーリング(癒やし)、占い、風水などの市場規模は意外と大きく、総務省の調査(2009年)によれば、スマホ・携帯の占いサイトは約200億円、ヨガにいたってはもはや約1600億円の経済圏と推計されている。少し前のデータだが、実態はさほど変わっていないはずだ。日本人の約8割(1億人)は毎年初詣をしているし、新海誠監督の映画は神道をテーマに絡めて大ヒット。「聖地巡礼ツアー」「推し活」などの言葉も日常的に使われ、バーチャルリアリティー(仮想空間)にはせっせと鳥居や神社がつくられている。
政府もこの領域に注目している。観光庁はインバウンド観光マーケットに関するリポート(20年度)で、修験道を主にした洞川温泉街の早朝時間活用事業などを提案。その企画書には「禅や瞑想、修験道等でそれを実践する日本古来の文化は、SBNR層によって再発見されている」とある。