成功率は30%どまり…“新規事業の専門家”が指摘する「プロジェクトが失敗する」3つの落とし穴とは?

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 コロナ禍を経て、多くの企業が「次の稼ぎ頭」を求めて新規事業づくりに本腰を入れ始めました。しかし統計をひもとくと、事業化まで到達して満足できる成果を上げる新規事業は、約30%にとどまります。投下した資金や人材が本業の利益を圧迫し、担当者が肩を落とすーー。そんな光景が少なくありません。なぜ失敗がここまで多いのでしょうか。新刊 『プロジェクト大全ー独創的な発想が最高の成果を生み出す』(日本実業出版社)の著者である金杉肇氏に、新規事業が失敗する落とし穴とその打開策を聞きました。

 現場で数多くの新規事業にたずさわった金杉氏によると、新規事業プロジェクトが失敗に陥る要因は、三つに集約されるという。

【落とし穴1】それは顧客の課題か?

「社長命令だから」とか「今の流行りだから」と、社内で十分な検証をしないままプロジェクトが動き始める例は後を絶ちません。事業の原点は、顧客(利用者)の課題を深掘りすることにあります。根拠がないまま思いつきで走り出すのは危険です。

 たとえば、ある医療アプリでは、高度なAI診断機能を搭載することばかりに注力した結果、患者が毎日長い項目を入力する手間を軽視してしまい、継続率が伸び悩みました。ユーザーが感じる面倒や不便を丁寧に拾い上げ検証する--。この地道なプロセスを飛ばすと、立派な機能も宝の持ち腐れになります。

【落とし穴2】自社の強みを横展開すれば成功するのか?

「自社の強みを横展開すれば必ず成功する」という思い込みも失敗の温床です。先端素材メーカーがアウトドア用品に参入した事例では、素材性能の高さばかりを訴える一方で、自然の中でどう快適になるかという体験設計を後回しにしてしまいました。

 強みを顧客価値に翻訳できなければ、優れた技術も独りよがりになります。素材の熱伝導率や耐久性を説明するだけではなく、冬のキャンプで手がかじかまない、突然の雨でも荷物が濡れないといった、具体的なシーンでメリットを示すことが欠かせません。

【落とし穴3】完璧を目指せばいいのか?

 未知の領域で完璧主義を貫くと、開発コストも時間も雪だるま式に膨らみます。ある通信企業は独自SNSを一年以上かけフルスクラッチで開発しましたが、公開初日にアクセスが集中したためサーバーが停止し、ユーザーが戻らないまま撤退しました。

 小規模な試作品を数週間で出して、負荷や反応を確かめていれば、システム全体を作り直すより、はるかに小さなコストで軌道修正できたはずです。まずは動くものを作り、実際の利用データで学ぶ姿勢が不可欠です。

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