インド仏教界頂点の僧侶 佐々井秀嶺さんに日本はどう映る

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インド国籍を取っても心に武士道

 仏教発祥の地でありながら、ヒンズー教徒が圧倒的多数を占めるインド。しかし、近年、爆発的に仏教徒が増えている。そのインド仏教界の頂点に立ち、育てたインド人僧と共に民衆を指導するのが、実は81歳の日本人だ。青年時代、生きることに悩み自殺未遂を繰り返したが、山梨県の大善寺に拾われ、僧となった。半世紀前からナグプールを拠点に仏教復興と不可触民(カーストにも入れない最下層民)の解放に取り組んでいる。インド仏教1億5000万人の頂点に立つ高僧に、今の日本はどう映るのか。

  ――インドを訪れたのが1967年。半世紀近くも帰国せず、仏教の復興と最下層の人々のために戦い続けてこられました。

 渡印する2年前、仏教の交換留学生として、高尾山の薬王院から信仰のあついタイに渡ったんだ。民衆は貧しいのに、食べ物や生活用品などたくさんの寄進をしてくれる。真面目に修行もしたが、そんな恵まれた環境がかえって良くなかった。コカ・コーラを1日で20本も飲んで、アル中ならぬコカ・コーラ中毒に。そして中国娘と恋に落ちたり、タイ美人に迫られたりと女に溺れ、恥ずかしくて日本に帰れない。そこでインドに旅立ったのです。

  ――逃げるようにしてインドに向かったのですね。

 そうです。インドの日本山妙法寺の八木上人の下でお世話になり、1年後に帰国を考え始めたころ、突然、枕元に大乗仏教の祖、龍樹菩薩が現れ、私に「南天龍宮城へ行け、南天鉄塔もまたそこに在り」と伝えると姿を消したんだ。

  ――日本語の夢だったのですか?

 日本語だけど夢じゃないよ、ものすごい強い力で肩を掴まれ動けないんだから。上人に聞くと「龍はナーガ、南はプール……インドのど真ん中にあるナグプールのことではないか?」と。くしくも、そこは、アンベードカル博士(仏教復興運動の指導者)が亡くなる2カ月前に、10万人をカーストのない仏教に改宗させた地。アウトカーストである不可触民解放に力を注ぎ、新憲法を制定したインドの偉人だ。当時の私は博士の名前も知らなかったが、お告げといい、何か宿命を感じざるを得ない。

■「日本は仏教国。戦争はいかん」

  ――当時のナグプールはどんなところでしたか?

 仏教徒の多い地区に行ったんだが、バラックのような建物が並んで治安は最悪だった。当時は、カーストのない仏教に改宗しても、貧しいまま。何千年も前から触れたら汚れると虐げられてきた人々だ。博士が急に死んでしまって、皆、どうしていいか分からない。私が裸足でお題目を唱えて街を歩くと、突然やって来た日本人にびっくりして「何だ、こいつは?」と石を投げつけることもあったが次第に聞いてくれるようになってな。

  ――佐々井さんが来てから街は変わりましたか?

 そりゃ、変わったよ。私は「学びなさい。お金がないなら、親が1食ぬいて子供を学校にやりなさい」と。学校に養老院、孤児院、それに迫害されたときに皆で団結できるよう組織もつくった。希望ができると人は見違える。インドの子はよく勉強します。その子たちも大人になると稼いだお金を出し合い、また地域に学校をつくる。今では本当に街がきれいになり、治安も良くなった。

  ――日本の戦後からの復興のようですね。しかし、今、日本では「共謀罪法」が成立したことで、再び、戦争へ近づいているのではないかと国民は心配しています。

 私は普段、インドで暮らしているので、日本の政治の詳しいことはあまり分からない。ただ、当時と違い、日本国憲法は言論の自由や戦争反対をうたっているので、第2次世界大戦前後のように憲兵が人々を引っ張っていくような事態にはならないだろうが、私も小さい頃に経験した戦争は、ほんとうにひどいものだった。日本は仏教国だ。仏教は自由を尊重し、博愛主義。戦争はいかん。戦争を経験した世代は悲惨さを伝えてほしい。

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