経済理解できない“アベクロ” 誤ったデフレ脱却策の危険性
やはり黒田バズーカは空砲だった。日銀が先日の金融政策決定会合で一定の金利上昇を容認した。異次元レベルの超低金利政策によるデフレ脱却を掲げ、黒田東彦総裁が就任したのは2013年4月。当初は「2年で2%の物価上昇率を達成する」と豪語したが、金利をゼロから、さらに異常なマイナスへと引き下げても、この5年余り一度も達成できていない。
消費者物価指数の伸びは0%と1%の間を延々と行ったり来たり。6月も前年比0.8%増にとどまり、金利政策に従って物価が動く気配は全く見えない。さすがに黒田日銀も今年度の物価上昇率見通しを前回4月の1.3%から1.1%に、19年度は1.8%から1.5%に、20年度は1.8%から1.6%に下方修正せざるを得なかった。
異次元緩和の開始から実に5年を経ても、黒田日銀は2%の物価目標に届かないことを自ら認め、金利上昇にも踏み込んだわけだ。これは異次元緩和の敗北宣言に等しい。以前から繰り返しているが、そもそも金利政策で物価を動かせると信じていること自体、大間違いなのである。
物価は需要と供給の関係で決まるのが、経済学のイロハのイだ。しかも、現在の日本は少子高齢化が急激に進んでいる。高齢者に爆発的な消費を期待するのは難しい。その上、経済のグローバル化も進み、低賃金労働に支えられた格安の海外製品がドンドン入ってくる。そして国際競争力の名の下、数少ない日本の若年層の賃金は低く抑えられ、消費が一向に上向かないという悪循環だ。しかも、それだけではない。この異次元低金利で、市中の金融機関は七転八倒の苦しみを強いられている。