崩れた圧勝皮算用 安倍3選という「終わりの始まり」<上>
裏目に出た恫喝、露呈した卑しさ
「干されてもいいのか」――。今回の総裁選で終始飛び交ったキーワードである。安倍と会った岸田政調会長が不出馬を決断したのも、自ら率いる派閥全体が干されることを危惧してのことだった。
無投票3選を狙っていた安倍は、総裁選が始まるずっと以前からライバルを潰すことに躍起で、そうした強権的手法は安倍側近や親衛隊に引き継がれた。選挙戦最終盤になって、西村官房副長官が、地元の神戸市議に対し「石破を応援するな」と圧力をかけていたことや、安倍応援団のひとりが、石破派の斎藤農相に「石破を応援するなら辞表を書いてからやれ」と迫っていたことも公になった。
今回、異常な“恫喝選挙”は完全に裏目に出た形だ。
石破が党員票で45%を獲得し、50人程度とみられていた議員票で20人以上、上乗せしたのも、締め付けに対する反発だったのは間違いない。
政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「今度の総裁選で、安倍首相の本性が党員にもすっかり見透かされてしまいました。世論調査ではこれまでも安倍政権の政策に対してネガティブな反応が出ていましたが、今回、ついに党員にすら安倍首相は見放された。虚像がガタガタと崩れ、“オレ様政治”の限界が露呈したともいえます。それは安倍首相もうすうす感じているのではないですか。20日3選が決まった直後、壇上の挨拶でまず石破氏の健闘を称えた。心にもないのに、普段の安倍首相ならあり得ないことでした。記者会見でも『明日の日本をつくる』など平凡で陳腐な話しかできず、勇ましい“安倍節”は消えていました」
驕れるものは久しからず、である。