著者のコラム一覧
春名幹男国際ジャーナリスト

1946年生まれ。元共同通信特別編集委員。元名大教授。ボーン・上田賞受賞。著書に「秘密のファイル CIAの対日工作」など。

トランプを含む多くの共和党議員が「プーチンの右派独裁的国家主義」にイデオロギー的に共感?

公開日: 更新日:

【トランプ復活でカオス化する世界】(下)

 共和党の予備選挙で連勝し、指名が確実なトランプ前米大統領が本選でも勝てば、米国は「想定不可能なダメージ」を受ける。

 オバマ元大統領に近いエリック・ホルダー元司法長官はそう語る。米紙USAトゥデーによるとオバマも「同じ考え」のようだ。

 同紙の最新の全米支持率調査ではトランプが39%、バイデン大統領が37%。予備選で他に有力候補がいないバイデンはミシガン州で81%得票したが、同時に「支持候補なし」との投票が異例の13%もあった。

 アラブ系住民がバイデン政権のパレスチナ政策不信を態度で示した。ウクライナ支援も難航し、高齢の問題や失言が続いて、有権者の支持は当面取り戻せそうにない。

 取りざたされる代替候補の名前は昨年来、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム、ミシガン州のグレッチェン・ウィットマー両知事ら同じ顔ぶれ。不出馬の理由も「バイデン氏を支持しているから」と同じだ。

 しかし今回の大統領選は歴史的にきわめて重要だ。トランプを勝たせると、最強の軍隊を持つ米国がロシアと緊密な関係になってしまう恐れがあるからだ。

 ジョン・ブレナン元米中央情報局(CIA)長官やジェームズ・クラッパー元国家情報長官らは、トランプが何らかの理由で、ロシアのプーチン大統領に事実上操られているとの印象をメディアに明らかにしている。

 具体的な証拠は不明だが、ジョン・ボルトン元大統領補佐官は自著に奇妙な事実を書いている。ヘルシンキで行われた2018年の米ロ首脳会談で、トランプは通訳に、一切ノートに記録するなと指示したというのだ。

 そもそもトランプはロシアによる16年大統領選介入の捜査で十分な協力をしていない。

 また、現在の共和党の内部でプーチンを「イデオロギー的同盟者」とみる下院議員のグループが行動を始めたという。ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

 米国ではこれまで数十年間、民主・共和両党間で超党派的なコンセンサスが成立していたが、トランプを含め多くの共和党議員は「プーチンの右派独裁的国家主義」にイデオロギー的シンパシーを持っているというのだ。まさに「共和党プーチン派」と言える。対ウクライナ追加軍事援助をブロックしたのは彼らだ。

 トランプが再選されれば、さらにNATO条約の義務を放棄する可能性がある。トランプ政権末期には駐ドイツ米軍部隊の撤退を決め、バイデン政権がそれを撤回した事実もある。

 トランプ再選を阻む可能性があるのは、トランプを被告とする4つの裁判だ。しかし、トランプ陣営は判決を投票日以後に遅延させようと躍起になっている。大統領になれば起訴取り下げも可能になるからだ。 (おわり)

【プレミアム会員限定】春名幹男オンライン講座 動画公開中

 https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/4592

■関連キーワード

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 政治のアクセスランキング

  1. 1

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  2. 2

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 5

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  1. 6

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  2. 7

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  3. 8

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  4. 9

    維新が手にする血税は33億円…定数削減へチンピラまがいの圧力、税金原資にキャバクラ&ショーパブ代支出の疑い

  5. 10

    「おこめ券」に続き“やってる感”丸出し…鈴木農相がひっそり進めるもう一つの肝いり政策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった